日本の造船会社の世界ランキング 政府が現状・課題と再生の道筋を整理
かつて「造船王国」と呼ばれた日本ですが、中国・韓国の台頭により苦境に立たされています。こうしたなか、政府は造船業を総合経済対策の17項目の戦略分野の一つに盛り込み、「造船業再生ロードマップ」をまとめました。官民合わせて1兆円規模の投資をし、約900万総トンである年間建造量を、2035年に1800万総トンに引き上げる目標を掲げています。
かつて「造船王国」と呼ばれた日本ですが、中国・韓国の台頭により苦境に立たされています。こうしたなか、政府は造船業を総合経済対策の17項目の戦略分野の一つに盛り込み、「造船業再生ロードマップ」をまとめました。官民合わせて1兆円規模の投資をし、約900万総トンである年間建造量を、2035年に1800万総トンに引き上げる目標を掲げています。
目次
国土交通省の公式サイトによると、かつて首位を走っていた日本は2024年時点で、世界3位のポジション(中国:約71%、韓国約14%、日本約8%)と、シェアは縮小しています。
とくに中国はここ2年でシェアを44%から71%へと大幅に伸ばしており、世界の船舶供給をコントロールしかねない規模になっています。
2025年6月、国内最大手今治造船が、国内2位ジャパンマリンユナイテッド(JMU)社を子会社化することに合意したと発表し、世界4位の建造量を誇る規模になる見込みですが、それでも企業ごとの建造量(2024年実績)を見ると、日本企業と海外のトップ企業との間には「規模の壁」が存在します。
受注船の内訳からみると、中国は全船種を網羅的に建造しており、韓国はLNG運搬船、コンテナ船、タンカー等を建造しており、とくにLNG運搬船については世界シェアの大半を占めています。一方の日本は、バルカー、コンテナ船、タンカー、自動車運搬船等を建造していますが、LNG運搬船については直近での建造実績はありません。
国内の主要プレイヤーに目を向けると、日本の造船業界は、上位5社で国内建造量の約8割を占める構造になっています。
今治造船: 328万総トン(国内シェア36%)
ジャパン マリンユナイテッド(JMU): 141万総トン(同16%)
大島造船所: 132万総トン(同14%)
名村造船所: 68万総トン(同7%)
新来島どっく: 67万総トン(同7%)
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日本と比較すると、中韓のトップ企業は、1つの事業所(造船所)あたりの従業員数、敷地面積、生産量ともに大きいのが特徴です。日本の造船所はスケールメリットで劣後しているのが現状です。
日本がシェアを落とし続けている背景には、構造的要因があります。政府資料は、以下の課題を指摘しています。
日本と中国で同じ船を造る場合、日本の建造コストの方が約2割高くなります。とくにコスト差に影響している要因の一つが、鋼材・資材価格です。船舶受注後(船価確定後)に材料を調達するため、物価の上昇局面で利益が圧迫される傾向にあります。中国では、共同調達によるスケールメリットを生かした調達コストの削減に強みがあります。
ロードマップはコスト差を埋めるために「船舶建造コストの削減と許容船価の上昇の両面から対策を講じる必要がある」と指摘しています。
建造量は2019年1600万総トンから2024年900万総トンへと、減少傾向が続いています。日本の船主の1年間の造船需要1200万トンを下回り、2022年以降、日本船主による中国造船所への発注が大きく増加し、全体の3~4割程度(2010年代後半は約1~2割)を占める状態になっています。日本の建造量が伸び悩んでいる理由は、以下にあるといいます。
この状況が続くと、国内のサプライチェーンを維持できず、海上貿易に不可欠なタンカーやばら積み船などの船舶の建造について、極度に他国へ依存せざるを得なくなるおそれがあり、供給途絶時のリスクが顕在化してきました。
こうしたなか、政府の日本成長戦略本部は2025年11月、造船業を「危機管理投資」、「成長投資」の戦略分野として、造船を位置づけました。
その理由として海運業や船舶産業を中核として、幅広い関連産業とともに、受発注の循環を持ちながら集積した海事クラスターが形成されており、中核のいずれが欠けても、この循環が途切れ、海事クラスター全体として存立が揺らぎ、経済安全保障等に重大な支障が考えられるとしています。
これに加え、日本は資源や食料のほとんどを輸入に頼り、貿易量の99.5%を海上輸送が担っています。また、海上自衛隊の艦艇や海上保安庁の巡視船は、すべて国内の造船所で建造・修繕されており、この技術は在日米軍の艦艇の修繕にも貢献していると説明しています。
造船業は、部品点数が多く裾野が広い産業です。造船所がある都市では、地域経済の大部分を造船関連が支えています。
こうしたなか、政府は造船業再生ロードマップをつくり、「2035年までに、国内建造能力を現在の約900万総トンから1800万総トンへ倍増させる」ことを目標に掲げました。これは、日本船主が必要とする船舶需要(1800万総トン)をすべて国内でまかなえる規模を取り戻すことを想定しています。
「造船業再生ロードマップ」に基づき、2035年までに官民で1兆円規模の投資実現を目指します。具体的には、①造船企業の資金調達を後押しする各種金融支援、②造船能力の抜本的向上のための「造船業再生基金」等による先進的な機器導入・施設整備や先端技術の開発・実証の支援、③非価格競争力向上に資するGX経済移行債を活用したグリーン投資等に投資していくことを想定しています。
そのうえで、カーボンニュートラル化に伴うエネルギーコストの高騰が見込まれるなか、日本が優位性を持つ省エネ技術の開発を継続し、ライフサイクルでのコスト(船価+燃料費)での優位性を維持することで勝ち筋を見出します。
これに加えて、知的財産のオープン&クローズ戦略を展開し、先行者利益と不可欠性を確保します。また、優位性確保を視野に国際規則づくりの主導を目指します。
政府は2035年までに、3つのフェーズに分けた具体的なロードマップを実行しています。
ロードマップの第1期は、船舶建造体制の強靭化、造船人材の確保・育成に向けた教育体制等の整備、脱炭素化等を通じたゲームチェンジ、安定的な需要の確保、同志国・グローバルサウスとの連携に取り組みます。
たとえば、船舶建造体制の強靭化では、DXやロボット・AI技術を駆使し、建造プロセス全体の生産性向上を目指します。経営面では、国内企業がバラバラに動くのではなく、グループ体制の検討から「1~3の強力なグループ体制」への集約を模索します。人材面では、2027年4月から運用が始まる「育成就労制度」を活用し、外国人材の戦略的な確保と育成に乗り出します。
第1期で得た知見を、実際の現場へ投入します。「造船業再生基金」などを活用し、老朽化した施設の刷新などを本格化させます。この時期、グループ内での設計・建造システムの共通化が進み、効率的な体制が整うことを描いています。
国際戦略では、アメリカとの合意(MOC)に基づき、艦艇の修繕を進めたり、東南アジアとの連携を強化したりして修繕ドックの海外展開も検討します。
最終段階では、増強した施設や高度化したAI技術をフル稼働させ、1800万総トンの建造体制の確立を目指します。
脱炭素化の流れを決定づけるため、アンモニア燃料船や水素燃料船といった「ゼロエミッション船」の商業化を完了させます。国際海事機関(IMO)における国際ルール策定でもリーダーシップを発揮し、日本が優位性を持つ省エネ技術を世界標準へと押し上げることを目指します。
2035年には、日本の船を日本で造る「自律性」を取り戻すとともに、次世代技術で世界を牽引することを目指します。
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