最高の仲間になるために、大切なことは何ですか?
大和ハウス工業・芳井敬一社長(1月6日)
子供の頃は群れるのが好きではなく、小学校でも友人の数は多いほうではありませんでした。当時はそろばん塾が全盛期で、そこの友人が私の仲間でした。中学時代もそろばん塾仲間と一緒に過ごすことが多かったです。
高校からラグビーを始め、大学、社会人でも続けました。勝ち負けがはっきりするスポーツは仲間意識も強まります。楕円形のボールをひたすら追いかけた日々から40年以上たつのに、今でも集まれば当時の試合、特に負けた試合の話題で盛り上がります。
社会に出ると、学生時代のような人間関係は難しくなりますが、私は支店長や東京本店長などの時代、意識して周囲との距離を縮めました。異動が決まり、離任する時、社員たちに自分の携帯電話の番号を教えました。「何か困ったことがあれば電話をしてこい。私はいつでもそばにいる」と伝え、実際に相談の電話をもらったことが何度もありました。
すぐに問題を解決できなくても、仲間がそばにいる、話を聞いてくれる仲間がいると思うだけで、心は安らぎます。異動のたびに携帯番号を教えてきたので、今では数百人の社員とつながっています。みんな私の大切な仲間です。
大和ハウスグループでは今、「Daiwa Future 100」という起業のコンテストを進めています。1人から上限5人までのチームをつくり、新規事業のアイデアを考えます。当選すれば今の職場を離れ、自ら立案したスタートアップ事業に専念します。
当初は400組くらい応募があればいいなと思っていたのですが、900組の応募がありました。20代から60代まで、幅広く手を挙げてくれました。
コンテストは1次審査の書類選考で60組に絞り込みました。840組は落選したわけですが、今回選ばれなかった社員たちは意気消沈することなく「来年こそ合格するぞ」と、決意を新たに再挑戦する姿勢をみせています。仲間がいれば、1度の失敗で挫折することなく、また挑むことができます。

私がうれしかったのは、書類選考を通過したアイデアに協力してくれるメンバーを募集したところ、落選者や応募しなかった者など600人が協力したいと申し出てくれたことです。
新規事業に挑む仲間を助けたいという心意気を持つ社員が、これほど多くいたことに感激しました。これだけでも起業コンテストをやったかいがありました。
社長である私の仕事は、いい仲間といい仕事をしたいと思う社員たちに、チャンスを与えることだと思っています。給与や福利厚生などの待遇改善も大事ですが、社員たちがいきいきと挑戦できる環境や機会をつくること。これこそが人的資本経営の基盤だと思います。
読者の皆さんも、職場や学校などで仲間がいるでしょう。今回、皆さんにお聞きしたいのは、「最高の仲間になるために、大切なことは何ですか」です。あなたの思うこと、感じること、考えたことを、あなた自身の言葉で伝えてください。
編集委員から
インタビューで芳井社長に「仲間をつくるために大切なことは何か」と尋ねると、間髪入れず答えが返ってきた。「たった一つ、ウソをつかないこと」。社長がウソをつかない会社ならば、その仲間の集合体である会社にもウソはない。周囲はそう信頼するだろう。
企業でたびたび不祥事が起こる。そのたびに記者会見でトップが詰められる。組織を守るために、顧客に迷惑をかけないために、監督官庁に忖度(そんたく)してなど、様々な理由で意に反し、経営者が真実を語れないこともあったかもしれない。だが最終的に消費者や取引先、株主など仲間の信頼を失わない企業は、トップの言葉や企業としての姿勢に、ウソがない組織だと思う。
大和ハウス工業でも芳井社長体制の3年目、中国拠点で現金230億円が紛失する不祥事があった。発覚した翌日、芳井社長は詳細がわからないまま会見に臨んだ。その後も不祥事は起きたが、この会社にウソはないという、仲間たちの信頼は揺らがなかった。(編集委員 鈴木亮)
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今回の課題は「最高の仲間になるために、大切なことは何ですか?」です。420字程度にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは14日(火)正午です。優れたアイデアをトップが選んで、27日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/future/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。