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シリーズ構成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アニメ制作におけるシリーズ構成シリーズこうせいアニメシリーズ全体の脚本や設定を統括する工程・役職である[1]

概要

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シリーズ構成はテレビアニメシリーズなどのシリーズ作品で用意される工程・役職である。複数の脚本家が参加する作品ではそのまとめ役を担う。いわば脚本の監督とも言える仕事である[1]。クレジット上では「構成」「シリーズコンストラクション」「メインライター」「ストーリーエディター」「チーフライター」などと表記される。

シリーズ構成はプロデューサー監督から脚本・文芸面で一定の責任と権限を持たされる[1]。監督・プロデューサー・原作者などの制作意向を確認し、各脚本家の具体的な選定・指示、エピソードの各回への配分、脚本家が出してきたシナリオの修正などを行う。シリーズ構成がほとんど原作者のような役割を果たす作品もあれば、脚本面のまとめ役以外にはほぼ踏み込まず監督・プロデューサーの良き相談相手の役割を果たす作品もあり、作品によって大きく役割は異なる[2]

アニメ・特撮の脚本家にとってはキャリアアップの到達点と言えるポジションであり、その仕事内容から豊富なキャリアとコネクションを持つ中堅やベテランの脚本家が務める事がほとんどである[要出典]。またシリーズ構成が置かれない作品もあるが、脚本の統括は監督あるいはベテラン脚本が果たすことになる[要出典]

仕事の具体例

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シリーズ構成の仕事は現場ごとに大きく異なる[2]。以下は仕事の一例である:

  • 監督・プロデューサー・原作者などと相談し作品全体の流れの提案
  • 脚本家何人で制作するかを決め、作品にあった脚本家の選定と依頼
  • 各話についてアクションが中心となる回ならそれが得意な脚本家に、ラブコメが来る回にはラブコメで定評のある脚本家に任せる
  • 各脚本家のスケジュールの確認と調整
  • 各脚本家によるシナリオが作品全体から逸脱していないか、矛盾や問題点が発生していないか確認と修正
  • 脚本会議において他スタッフへの説明と作品の練り上げ
  • 第1話・最終回・重要な回などでは自ら脚本を書く
  • オリジナル作品は監督やスポンサーの都合などによって先の展開が変わる事も多く、その脚本全体の調整
  • 放送予定日が真夏の第XX話は海水浴に行くエピソードにする、あるキャラクターにスポットを当てる回を第XX話にするなど流れの決定
  • スポンサーの新商品の発売スケジュールに合わせてアニメでも新登場による主役のパワーアップを第XX話で行うなどの調整
  • 原作のエピソードやキャラクターなどについて省略したり、オリジナルのエピソード・設定で辻褄を合わせるなどの調整
  • 放映の打ち切りないし延長が決まれば、それに合わせて進行中のエピソードの結末や展開を変更

工程

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シリーズ構成はアニメ制作の様々な工程に関与する。

構成会議

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構成会議こうせいかいぎはシリーズ構成をおこなう会議である。シリーズ構成会議シリーズこうせいかいぎとも。

構成会議は監督・プロデューサー・シリーズ構成・原作者などが出席する。シリーズ構成の確定が目的である。構成会議は必要に応じて複数回おこなわれる[3][4]

構成会議では一例として以下の議題を扱う。

原作と各話の対応付け

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原作付きアニメの構成会議では原作と各話の対応付けをおこなう。つまり原作のどの範囲をどの話で扱うか(あるいはスキップするか)を決定する[5][6]。尺などの都合で原作の要素を削除する場合、その削除が作品全体へどう影響するか・連鎖して削除すべき要素が発生するかなどをシリーズ全体の目線から検証する必要がある[7]。そのため脚本の前段階である構成会議の時点で原作と各話の対応付けを決定しておく必要がある。

原作設定の掘り下げ

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原作付きアニメの構成会議では原作設定の掘り下げをおこなう[8][4]。つまりアニメ化に必要だが原作に不足している設定を用意する。これら設定はシリーズ全体を通して矛盾がなくかつ効果的である必要がある。そのため脚本の前段階である構成会議の時点で設定の掘り下げが必要になる。

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c "シリーズ構成の人って何してる ... 金春 おおざっぱに言うと ... 脚本全体の取りまとめ役" madhouse 2006 より引用。
  2. ^ a b "シリーズ構成の人って何してる ... 金春 シリーズ構成は、作品によってかなり作業内容が変わる" madhouse 2006 より引用。
  3. ^ "構成が決定するまでには構成会議があり ... 監督や原作サイドが「これで行きましょう」と言うまでは、会議は何度も繰り返し行われます。" マグミクス 2022 より引用。
  4. ^ a b "構成会議みたいなものは、ずっとやっていて、キャラクターのラフだったり、性格設定の話なんかは、ずっと隔週~月1くらいでやっていた" 電撃オンライン編集部. (2012). 高村和宏さんの新作アニメ『ビビッドレッド・オペレーション』プロデューサー、アニプレックス・鳥羽洋典さんを直撃!!. 電撃オンライン.
  5. ^ "最初に原作のどこまでをアニメでやるのかを決めて、「何話ではこのエピソードを」という構成会議もしっかりやった" 以下より引用。animate Times編集部. (2023). 秋アニメ『とあるおっさんのVRMMO活動記』中澤勇一(監督)×待田堂子(シリーズ構成)インタビュー. animate Times.
  6. ^ "構成会議 ... 原作のどの話をどのように組み込むかといったことまで細かく決め込んでいく" 以下より引用。日詰明嘉. (2022). 待田堂子③ アニメファンの存在を意識した『らき☆すた』. Febri TALK.
  7. ^ "ある場面を削って尺に収まるように書けばそれで済むという、単純な話でもありません。そうすることで、求められる面白さが充分に表現できないどころか、前後のつながり自体損なわれて、お話として成り立たなくなることもあり得る" マグミクス 2022 より引用。
  8. ^ "主要キャラクターの設定を徹底的に決めようと作りこみました。ゲーム上では決まっていないことがたくさんあって ... 細かい設定を全部表にしていく作業を延々とやっていました。たしか、この作業が一番最初の構成会議だった" 以下より引用。皐月誠. (2014). アニメ『シンデレラガールズ』最新PVでメインキャラなどがついに判明! 鳥羽Pがさらなる詳細を語る. 電撃オンライン.

参考文献

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関連項目

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