梱包・包装資材分野で業界をリードし、延伸技術を核に製造・販売・包装システムまでを手掛ける司化成工業株式会社。昭和43年設立の老舗として培い、成長させてきた事業基盤の裏で、長年「紙とハンコ」を前提としたアナログな業務フローが事業の成長速度を阻害しかねない大きな課題となっていた。
稟議から決済承認に2週間超、Excel管理やメールのやりとりでは承認漏れも頻発──。まさに「限界」だった状況を打破すべく、同社の管理部門が主体となって導入したのがクラウド型のワークフローシステムだった。
本記事では、同社がどのようにして自社の課題に適するSaaSを見つけ出し、トップの即決を得て、わずか3カ月という短期間で導入を成功させたのか。バックオフィス部門を主体とする業務DX計画成功の手段・秘訣を、プロジェクトを力強く推進した同社管理部の土居和則氏に伺った。
業務のデジタル化、システム化を検討しているが、自社特有の課題があるので導入に不安を感じている、まず何をすればよいのかで悩んでいる──。そんな企業の経営層、担当者はぜひ参考にしていただきたい。
システム導入前の課題
- 紙やFAXを主体とした申請・承認フローにより、決裁に数週間を要していた
- メール申請に切り替えて対策するも、今度は承認漏れが頻発し、根本的な解決に至らなかった
- 申請者側の入力漏れや管理者の修正・差し戻しに多大な工数がかかっていた
システム導入後の効果
- 申請・承認の時間が劇的に短縮された
- 取引先申請、稟議や海外出張申請など活用範囲が全社的に拡大した
- 申請や操作に関する現場からの問い合わせがほぼゼロになり、管理者の負担が大幅に軽減された
目次
「これ以上は無理だ」──FAXとハンコ文化による“決裁の2週間待ち”地獄
社名 | 司化成工業株式会社 |
所在地 | 東京都台東区(本社) |
設立 | 1968(昭和43)年12月 |
従業員数 | 約100人(国内) |
事業内容 | 延伸を主体とした各種プラスチックの生産・販売、各種延伸生産機械の設計、 販売。海外プラスチック関連機械、包装機械、製品の輸出入。包装省力化システムの設計、製作並びに各種包装機械、包装資材の販売など |

司化成工業のWebサイト

司化成工業 管理部課長の土居和則氏
「私たちの会社は、5年ほど前までは本当にアナログな文化でした。それこそ勤怠管理システムすらなかったくらいです」
そう語るのは、司化成工業で経理・総務・人事を担う管理部課長の土居氏だ。同社はPPバンドやストレッチフィルムといった製品で知られる梱包資材の製造・販売をグローバルに展開する老舗メーカー。その事業基盤は、長年にわたり確立された業務プロセスに支えられてきた。しかし、そのプロセスの一部は時代の変化とともに大きな足かせにもなっていた。
特に深刻だったのが内部の稟議申請・承認行程だ。中でも、営業担当者が新しい取引先との契約を進めるための「取引先申請」は事業の根幹に関わるタスクだが、そのプロセスが非効率を極めていたという。
「当時は、地方・各拠点の営業担当者が作成した申請書をまず本社に“FAXで送ってもらう”ところから始まります。その紙を今度は承認ルートに沿って上長のデスクへ物理的に回していく。そして最終的には、東京の本社にいる社長が決裁するという流れでした。そのため、例えば社長が海外出張などで1~2週間不在となればその間、取引申請がすべてストップしてしまうことも珍しくありませんでした」
申請には、取引先の信用調査に関する書類など複数の添付資料が必要で、書類に不備があれば地方の担当者と電話やFAXで何度もやり取りが発生する。これらさまざまな要因が重なり、1つの申請を完了させるだけで膨大な時間と手間がかかっていた。
この状況を打開すべく、申請書をメールに添付する運用へと切り替えた。デジタル化、ペーパーレス化への一歩ではあったが、これが新たな問題を生むことになる。
「承認者である上長クラスのメンバーは、日々大量のメールを処理しています。その中に申請メールが埋もれてしまったり、“後でやろう”と思っているうちに忘れてしまったりと、今度は承認漏れが頻発するようになりました」
「さらに入力漏れといった書類の不備も依然として多く、その度に管理部門の我々が内容を確認し、修正を依頼して再申請してもらうという非効率なラリーも未だ続いていましたし、管理部門として最終決裁者である社長へ申請を上げる作業も負担でした。関係者全員が見えないストレスと無駄な時間に疲弊していたのです。もう、これ以上このやり方を続けるのは無理だと感じていました」

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決め手は「圧倒的な安さ」と信頼感 社長も即決、わずか3カ月で導入できたワケ
「手動で申請を回す時間そのものが無駄だ」。そう痛感した土居氏は、専用システムの導入で課題を解決する方向へ動き出す。自社に特定の取引先ベンダーがあるわけではなかったことから、ネット検索による手探りな情報収集がスタートラインだ。
「複数の製品を比較検討する中で、私が最も重視したのは“コスト”でした。まずは一番安い製品がどんなものか見てみよう、という観点で探したのです。その中で見つけたのが、株式会社LayerXの提供する『バクラク申請』でした」
奇遇にも別の商談でバクラクの担当者と面識があったという土居氏。その時の誠実な対応が記憶に残っていたことも後押しした。
「早速連絡し、当社の複雑な事情を率直に伝えました。拠点ごとに承認ルートを柔軟に設定したいこと、将来的に他のシステムと連携できる可能性があること、そしてスマートフォンでも場所を選ばず手軽に承認できるようにしたいことなど、細かな要望をリストにしてぶつけました。すると、担当者の方からは“すべてできます”と、非常に明確で心強い返答をいただくことができたのです」

司化成工業が選定したクラウド型ワークフローシステム「バクラク申請」
迅速かつ自社が望んでいた的確な返答、そして他のSaaS型製品と比較しても安価な価格設定。「この担当者となら、この製品となら、きっとうまくいく」。そう確信した土居氏は、「バクラク申請」一本で社内提案を進めることを決意したという。
「社長への稟議では、まず“コストが一番安いものを選びました”と正直に伝えました(笑)。その上で、これまで抱えていた課題をどう解決できるのか、機能面でのメリットを具体的に説明したところ、“いいよ、やろう”と即決でした。後から聞いた話では、社長自身もこれまでの古く面倒なフローに辟易しており、“早くこうしたシステムを入れたかった”と思っていたようです」
トップの迅速な意思決定もプロジェクトを大きく前進させた。2024年9月に本格的な検討を開始し、10月には契約を完了。11月には関係者への説明とテスト運用を行い、そして年内12月には本番運用を開始した。検討開始からわずか3カ月。長年続き、課題だった昭和・平成時代のアナログなワークフローは、現代のデジタル技術によって驚異的なスピードで刷新されることとなった。
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承認時間10分の1、問い合わせゼロへ 全社に広がるDXの波と「未来をつつむ」企業文化
バクラク申請の導入効果はすぐに現れた。
「体感ですが、申請から承認までにかかる時間がこれまでの10分の1以下になりました。申請状況が可視化されるので、今誰が作業しているのか、誰の承認で止まっているかが一目瞭然ですし、承認期限が近づけばシステムが自動でリマインドしてくれる機能もあることから、承認漏れがスッときれいになくなりました。申請者も承認者も、管理部門も、これまで苦労していたことは何だったのか──と思うくらいです」

司化成工業が運用するバクラク申請の管理画面。申請単位で、承認者、承認ステータス、承認期限などを分かりやすく可視化し、管理できる
特にこれまで多くのハンコを押す必要があった経営層から「非常に楽になった」という声が上がっている。
さらに驚いたのは、導入後に現場の従業員から申請に関する「問い合わせがほとんど来なくなった」ことだという。
「システム自体が最初から弊社にとって直感的に扱える設計でした。自社用の申請フォームを作る際も、入力項目を極力減らせるように選択式にしたり、迷いそうな箇所には“補足説明”を追加したりといった独自の工夫を設けることもできます。こうした準備も功を奏し、迷うことなく稟議・決済のフローを進められることから、管理部門への問い合わせもなくなったのだと思います。とてもスムーズに現場へ展開できましたね」

申請項目や内容に沿った承認者設定+スマホ対応とともに、状況を把握しやすく「承認モレ」がなくなった
導入効果は当初の目的だった「取引先申請」の効率化だけに留まらなかった。
「あまりに使いやすく効果が高かったので、今では“稟議書”や頻度の高い“海外出張申請”など、他の重要な申請業務もバクラク申請でのフローに移行しています。これまでブラックボックス化しがちだった稟議のプロセスが可視化されたことで、社内の合意形成の意識付けや、ガバナンス強化といった組織的な効果も生まれています」
同社は「みらいを、つつむ、まもる。」というキャッチコピーを掲げている。今回のSaaS型ワークフローシステムの導入は、まさに同社の未来をより良く包むための大きな一歩となった。
「弊社には、役職ではなく“さん付け”で呼び合う文化があります。社長や会長も率先して“ありがとう”や“ごめんなさい”を口にする。そうした風通しの良さが、今回の迅速な意思決定の土台にあったのかもしれませんね」と土居氏は振り返る。
最後に、同様の課題を抱える企業へのアドバイスを尋ねた。
「自分の会社が抱える問題を解決できるシステムを、諦めずに探し続けることが大切です。お試し期間などを活用してまずは使ってみる。導入後に後悔しないよう、選定の段階でしっかりと見極めることが結果的に導入責任者の負担を減らすことにもつながると思います。一人で悩まず、専門家に相談してみるのも有効な手段です。一歩踏み出せば、必ず次の一手が見つかるはずです」
レガシーな業務フローからの脱却に成功した同社の次なる挑戦は、すでに始まっている。
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