『KIDDO キドー』

若槻

5/10㈯~5/23㈮ ※火曜休館

2023年 オランダ

1時間31分 

配給:カルチュアルライフ

監督・脚本:ザラ・ドヴィンガー

製作:レイラ・メイジュマン / マールテン・ファン・デール・フェン

脚本:ネーナ・ファン・ドリル

撮影:ダウ・ヘニンク

美術:ブラム・ドワイヤー

衣装:ビータ・メース

編集:ファティ・トゥーラ

音楽:ジャック・ファン・エクスター

出演:ローザ・ファン・レーウェン / フリーダ・バーンハード / マクシミリアン・ルドニツキ / リディア・サドウカ / アイサ・ウィンター

オランダ発!新時代のロードムービー!爆誕!!

 あたしの名前はルー。ママにはキドー(お嬢ちゃん)って呼ばれてるわ。今日はあたしが暮らす家(児童養護施設)にママがやってくる日。「ママだっ!」。ハリウッドスターのママはとってもクール!ママの青くて四角いスポーツカーはガタゴト揺れるしずっとおんなじ昔の歌しか流れない、それにドアは重たくって1人でなんて開けられない、でもすっごくカッコいい。1日1回は必ず叫ぶママ、車のなかにツバを吐くママ。ママのすることならなんでもマネしたい。だって、ずっとママが恋しかったから。

 「この旅に携帯はいらない」と言って、運転するカリーナ(自称ハリウッドスター)が窓の外へ携帯をブン投げる冒頭のシーン。これを観たとき、私はヒリつく感情と高揚感がないまぜになり、破天荒な彼女の言動に一瞬で釘付けになった。そして気づけば私もカリーナの旅の道連れとなり、真似してパソコンにツバを吐いていた(嘘)。

 離れて暮らしていた時間を埋めるように、無邪気に戯れ、溶け合いだしていく2人。けれども旅に終わりは付きもの。誰もが経験したことのある旅の終盤になると感じるあのどうしようもないほどの虚脱感、そして夢から醒めたようにハッと現実を見つめたときの妙に冷静になる瞬間。そんな状況に直面したとき、2人はどんな行動をとるのか――?

 オランダからポーランドに住むおばあちゃんの家を目指す本作には、1960~70年代の名曲がふんだんに使用され、若手女性監督ザラ・ドヴィンガーのビジュアルセンスと遊び心あふれる作風で、まったく新しいロードムービーに仕上がっている。数多あるこの手の作品の中でも奇異な体験ができることは必至。さあ、彼女たちの車にあなたも乗り込もう。

(ホンマダイスケ / 月刊ウインド2025年5月号より)