近年、日本でも顧客の多くがキャッシュレス決済を求めるようになり、事業者にとってクレジットカード決済の導入は、競争力を高めるために欠かせない要素となっています。
特に、オンライン取引の拡大やインバウンド需要も回復しており、現金決済のみではキャッシュレスを前提とする顧客層への対応が困難になるため、販売チャンスを逃してしまいます。こうした環境変化に対応するためにも、クレジットカード決済の導入は、今後の事業拡大に向けた重要な取り組みと言えるでしょう。
本記事では、日本国内でのクレジットカード決済の導入方法を中心に、事業者・利用者それぞれの立場から見たメリット・デメリット、そして導入にかかる費用や選定ポイントについて詳しく解説します。
目次
- クレジットカード決済とは
- クレジットカード決済の導入方法
- クレジットカード決済の導入手順
- クレジットカード決済導入による事業者側のメリット
- クレジットカード決済導入による事業者側のデメリット
- クレジットカード決済導入による利用者側のメリット
- クレジットカード決済の導入費用
- クレジットカード決済代行会社の選び方
- クレジットカード決済の導入で広がるビジネスチャンス
クレジットカード決済とは
クレジットカード決済とは、Visa や Mastercard などの国際ブランドが発行するカードを用いて、商品やサービスの代金を支払う仕組みです。
経済産業省によると、日本におけるキャッシュレス決済比率は年々増加しており、2024 年には42.8% (141.0 兆円) に達しました。そのうち、クレジットカード決済が 82.9% (116.9兆円) を占め、主要な決済手段としての地位を確立しています。
このような背景から、クレジットカード決済の導入は、事業者にとって競争力を高める重要な要素となっており、幅広い顧客ニーズに応える上で欠かせない経営戦略の一環と言えるでしょう。
クレジットカード決済の導入方法
クレジットカード決済の導入を法人や個人事業主が行うには、下記のふたつのうちのどちらかの方法を利用することになります。ひとつめは、カード会社との直接契約、ふたつめは、決済代行会社の利用です。
カード会社と直接契約する場合
カード会社と直接契約する場合には、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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決済代行会社を利用する場合
決済代行会社と直接契約する場合には、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット |
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デメリット |
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クレジットカード決済の導入手順
クレジットカード決済の導入には、直接契約の場合、決済代行会社の場合とそれぞれ手順が異なります。
直接契約の場合
カード会社と直接契約する場合は、次のような手順で導入を行います。
- カード会社を選定する。
- 提出書類を準備する。
- 審査申し込みをする。
- 契約を締結する。
- 決済システムを導入する。
- 運用を開始する。
カード会社の選定後、必要書類を揃えて、クレジットカードブランドに申し込みをします。審査に通過後に決済システムを導入し、運用開始という流れになります。
注意したいのは、この作業は、カード会社ごとに行う必要があるということです。導入後の管理や返金処理などのトラブル対応も個別に対応しなければならず、事務の手間が増え、管理が複雑になるため、一般的な契約方法ではありません。
決済代行会社の場合
決済代行会社を利用する場合は次のような手順になります。
- 決済代行会社を選定する。
- 審査後、すぐにサービスを利用できる。
- 自社サイトやシステムと統合する。
- 運用を開始する。
料金、機能、サポート体制など比較した上で、自社にあった決済代行サービスを選定し、オンラインでアカウントの作成を行います。
審査の申し込みはオンラインで行い、審査を通過した後ですぐに決済サービスの利用が可能になる場合がほとんどです。導入までのスピードは、直接契約と比較した場合、かなり早いと言えるでしょう。その後、EC サイトやシステムと API 統合し、運用開始へと進みます。
クレジットカード決済導入による事業者側のメリット
クレジットカード決済を導入することで、事業者には売上拡大や顧客体験向上など、さまざまなメリットがもたらされます。
売上の増加
クレジットカード決済の導入をすることで、キャッシュレス志向の顧客層を取り込むことが可能になります。現金を持ち歩かないライフスタイルが浸透する中、カード決済ができない店舗やサービスは、購買機会を逃していると言っても過言ではありません。
また、特にオンラインショップやデジタルサービスの分野では、クレジットカード決済が標準装備されています。実店舗においても、多様な支払いニーズに応えることができるように柔軟な決済環境を整備することは大切です。オンライン、オフラインを問わず、決済手段を増やすことは売上最大化に直結する重要な施策と言えます。
客単価の向上
クレジットカードによる支払いは、手元に現金の持ち歩きがなくても大きな買い物ができるため、1 回あたりの購入単価が向上する傾向が見られます。
また、サブスクリプション型ビジネスでは、継続的な支払い手段としてクレジットカードが不可欠となり、高額プランやオプションサービスなどの追加購入をしやすい環境を整えることができます。分割払いやボーナス払いにも対応することで、高額商品の購入ハードルをさらに下げることができ、長期的な売上向上につなげることができます。
管理が簡単
クレジットカード決済を導入することで、売上情報や入金管理がシステム上で一元化され、業務効率が大幅に向上します。特に決済代行会社を利用する場合、複数のカードブランドの取引を一括で確認することができるため、業務の負担を大幅に減らすことができます。さらに、売上データの可視化が進むことで、経営状況の把握や資金計画の制度向上にもつながります。
クレジットカード決済導入による事業者側のデメリット
クレジットカード決済を導入することで、事業者側に多くのメリットをもたらしますが、同時にデメリットも発生します。後から慌てず正しく対処できるように、デメリットについてもきちんと把握しておきましょう。
手数料
クレジットカード決済では、売上に応じて決済手数料を払わなければなりません。そのため、現金取引と比較した場合、売上率に圧迫される要因となりえます。手数料率は、カードブランドや契約方式により異なってきます。導入する前に、条件を比較し、自社に最適なものを選択するようにしましょう。
入金サイクル
現金取引の場合、売上金は即日手元に入りますが、クレジットカード決済の場合は、商品やサービスの販売後から数日から数週間かかる傾向があります。短期資金繰りが重要な事業者の場合、キャッシュフローに影響を及ぼさないように、入金されるタイミングを考慮した資金計画が必要です。
チャージバックのリスク
クレジットカード取引には、チャージバックのリスクが伴います。チャージバックは、カードが不正利用された場合や利用者とのトラブルにより、売上がカード会社により取り消されることを意味します。チャージバックが発生した場合、事業者がクレジットカード会社に利用代金を返金しなければならず、商品も戻ることはありません。クレジットカード利用者を守るためのルールであり、安心してクレジット決済を利用してもらうために必要な措置ではありますが、事業者は、チャージバックから発生する業務負荷とリスクを把握しておくことが重要です。
クレジットカード決済導入による利用者側のメリット
それでは、クレジットカード決済を導入した場合、利用者にとってどのようなメリットがあるか具体的に見ていきましょう。利用者の視点から見た代表的なメリットをご紹介します。
ポイントなどの特典
クレジットカード会社では、クレジットカードで買い物をすると、ポイントやキャッシュバックがもらえるなどのキャンペーンを実施しているところも多く存在します。クレジットカードの利用は現金での購入よりもお得感が高いケースも多く、ポイント獲得やキャッシュバックキャンペーンのためにクレジットカードでの支払いを希望する人もいます。
スムーズな支払い体験
カード払いを利用すれば、現金でのやりとりが不要になるため、迅速でスムーズな支払いが可能になります。短時間で支払いを完了できる利便性は、顧客満足度の向上につながります。
支払い方法の選択肢が豊富
カード払いを利用すると、一括払いだけでなく、分割払いやリボ払いなど、支払い方法の選択肢がさらに広がります。利用者は支払いタイミングを調整することができるため、高額商品の購入もしやすくなると言えるでしょう。
このように、カード払いの導入は、経済性、利便性、柔軟性といったメリットを顧客に提供する手段となり、ショッピング体験の質をさらに高めることができるでしょう。
クレジットカード決済の導入費用
クレジットカード決済の導入には、初期費用、月額費用、決済手数料など、複数のコストが発生します。ここでは、決済代行会社を利用した場合の費用について説明します。
項目 |
コストの目安 |
---|---|
初期費用 |
無料〜数万円程度 |
月額費用 |
無料〜1万円程度 |
決済手数料 |
2%〜5% 程度 |
トランザクション費用 |
1 件あたり 無料〜数十円程度 |
振込手数料 |
1 件あたり 無料〜数百円程度 |
キャンセル手数料 |
1 件あたり 無料〜数百円程度 または決済金額の 1〜5% 程度 |
初期費用
初期設定費用や端末購入費用として、決済代行のシステムを導入するためにかかる費用です。決済代行会社により、無料から数万円程度とばらつきがあります。
また、対面決済用に端末を別途購入する場合は、端末費用として 2 万円前後を見込む必要があります。
月額費用
クレジットカード決済を導入後に発生する毎月の固定日です。決済代行会社により、月額料金が無料で、取引ごとの手数料が発生するところもあれば、決済システムの機器のリース費用やサポート対応を含めた月々の固定費用が発生するなど、様々なケースがみられます。
決済手数料
売上金額に対して都度課金されるのが決済手数料です。決済が行われるたびに、2%〜5% 程度のコストが発生します。
オンライン決済の方が対面決済よりもやや高めの手数料率となる場合が多いようです。
トランザクション費用
決済代行会社により、決済手数料の他に、トランザクション費用を請求する場合があります。トランザクション費用は、1 件の決済処理ごとにかかる固定費用で、金額の大小にかかわらず、決済を処理するたびに数円から数十円の費用が発生します。主にオンライン決済で設定されます。
振込手数用
決済代行会社から事業者の銀行口座へ売上金を振り込む際に発生する手数料です。1 振込あたり、数百円程度の手数料が売上金から差し引かれ、残額が銀行口座へ入金されます。ただし、決済代行会社により、一定金額以上の振込や、指定した銀行を利用した場合に、振込手数料が無料になる場合もあります。
キャンセル手数料
顧客が注文のキャンセルや返品をした際に、すでに成立したクレジットカードを取り消す必要があります。通常、クレジットカード決済を取り消すと、カード会社側で決済処理の巻き戻しや返金処理を行うため、その作業コストとして事業者に一定額が請求されます。日本国内では、1 件あたり、無料から五円程度に設定されています。ただし、決済がキャンセルされても、最初に差し引かれた決済手数料は原則として事業者に返金されないため、注意が必要です。
クレジットカード決済代行会社の選び方
クレジットカード決済代行会社を選定する際には、単に手数料の安さだけでなく、事業規模や運用体制に適したサービスを選ぶことが大切になります。どのような点に注意すべきか具体的に見ていきましょう。
コスト
先述したように、決済手数料や初期費用だけでなく、月額費用、トランザクション費用、振込手数料、キャンセル手数料など、できるだけコストの総額を正確に把握しましょう。途中、ビジネスを拡大したい時に、手数料の見直し交渉が可能かどうかも確認しておくとより安心です。
導入までのスピード
決済代行業者により、導入までのスピードにはばらつきがあります。審査がとても厳しかったり、審査期間が長引いて導入までに過度な時間を要する場合、特に新規事業とっては大きな障害となるリスクがあります。
迅速なサービス立ち上げが求められるスタートアップや新規参入企業では、スムーズな審査プロセスと短期間での導入が可能な決済代行会社を選んだ方が良い場合もあります。導入スピードを重視する場合は、申し込みの前にスムーズな導入が可能かどうか必ず確認しておきましょう。
サポート体制
決済サービスは導入後の運用中に、思わぬトラブルや対応が必要になる場面が少なくありません。単にサポート窓口があるだけでは不十分なことも多いため、問題発生時に迅速かつ適切な対応が受けられる体制が整っているかどうかが選ぶポイントになります。
チャージバック対応サポート、年中無休のカスタマーサービス、未入金トラブル時の補償など、具体的にどのようなサポートを受けられるか確認しておくと安心です。
セキュリティ対策
カード決済では、不正利用や情報漏洩リスクへの備えは欠かせません。PCI DSSへの準拠は必須条件と言えます。さらに、不正検知システムや 3D セキュアへの対応がされているかどうかも確認しましょう。
多様な決済方法
日本では、クレジットカード決済だけでなく、コンビニ決済や QR コード決済などの利用も多く見られます。ビジネスの拡大には多様な決済方法を導入することが必要不可欠なため、複数の決済方法に柔軟に対応できるサービスを選ぶとよいでしょう。
クレジットカード決済の導入で広がるビジネスチャンス
キャッシュレス決済の需要が急速に拡大する中、クレジットカード決済への対応は、事業者にとって必須といえる時代になっています。まだの方は、さまざまな業種でビジネスの拡大を目指すことができるクレジットカード決済の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
決済代行会社を利用すれば、初期費用や月額コストを抑えながら、スムーズかつ安全にクレジットカード決済を導入することが可能です。料金体系、セキュリティ対策、日本の多様な決済手段への対応状況をしっかり比較し、自社に最適な代行会社を選びましょう。
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この記事の内容は、一般的な情報および教育のみを目的としており、法律上または税務上のアドバイスとして解釈されるべきではありません。Stripe は、記事内の情報の正確性、完全性、妥当性、または最新性を保証または請け合うものではありません。特定の状況については、管轄区域で活動する資格のある有能な弁護士または会計士に助言を求める必要があります。