文/鈴木拓也

写真はイメージです。

厚生労働省の最近の調査によれば、不調を感じている人の症状別のトップは腰痛。続いて肩こりとなっている。また、手足の関節や頭の痛みも上位に入っている。

医療機関で受診するほどではなくても、こうした不快な痛みに悩む人は本当に多い。その原因として、関節包(かんせつほう)の問題を指摘するのは、理学療法士の山内義弘さんだ。

関節包とは、骨と骨のつなぎ目にある関節を覆い囲っている膜のこと。膜の中には、関節がどれだけ曲がっているか、どれほどの負荷で伸ばされているかなどを感知する、いわばセンサーが埋め込まれている。

このセンサーがあるからこそ、何の問題もなく滑らかに関節を動かすことができる。しかし、これがうまく働かないと関節は正しく動かず、ときには無理な動きとなって、痛みが生じる。

では、この不具合を治すにはどうすればいいか?

山内さんは、絆創膏が効果的であると、著書『体の不調をすべて解決する 絆創膏を貼るだけ整体』(KADOKAWA https://www.kadokawa.co.jp/product/322408000713/)で解説する。

「絆創膏を貼るだけ」とは、にわかには信じがたいこの方法。しかし、快方に向かう人が続出しているという。

それは、いったいどのようなセルフケアなのか。本書をもとに説明していこう。

大半の痛みはセンサーの不具合で起きる

山内さんは、関節包のセンサーに不調が出てくる原因として、同じ姿勢の継続、怪我、想定以上の負荷、関節の使いすぎを挙げる。

中でも多いのは、座りっぱなし、立ちっぱなしといった同じ姿勢の継続。本書では次の例が記されている。

例えば、ぎっくり腰など、なぜ「動いて痛い」痛みが起こるのでしょうか? 長時間のデスクワークなどが習慣化していると、骨盤周辺の関節のセンサーが働かなくなります。そのために、いざ立とうと思ったときに脳が筋肉に正しい命令を伝えられなくなるのです。結果、立つときに腰の関節が強引に動かされてしまい、ぎっくり腰などの動いて痛い痛みが起こるのです。(本書19pより)

山内さんによれば、これまで見てきた人の中で、痛みの85%がセンサーの不具合が原因だという。残る15%は、筋肉がこり固まって神経に悪い影響を与えるなどして、痛みが起きるそうだ。

絆創膏で筋肉をわずかに伸長させる

こうした慢性痛は、揉んだり、ストレッチをしてもなかなか改善しないが、筋肉の特性を知ることがカギになる。

実は、筋肉は動き出す前に「わずかに伸長」するという。例えば肘を曲げるとき、該当する筋肉は、「わずかに一瞬伸ばされた後の反射を使って肘を曲げて」いる。ところが、センサーに問題があると、その細かい動きのきっかけが作れず、不自然に別の関節を使って動かすことになる。これが無用の負荷を生み、痛みへとつながる。

そこで、絆創膏の登場。

絆創膏で、皮膚を引っ張って伸ばす情報を与えることで、筋肉がわずかに伸びて曲げるという動きが再現しやすくなると、山内さんは説く。そうなれば、センサーや筋肉が活性化され、体はスムーズに、痛みを伴うことなく動かせるようになる。これが、「絆創膏を貼るだけ整体」の基本原理だ。

絆創膏で五十肩を改善する

本書には、様々な症状に対応した絆創膏を使うセルフケアが載っている。

いずれも、絆創膏を指定の箇所に貼るだけ。貼る時間は、関節の場合は長くても1分。筋肉の場合も長くても5分だけ。使用する絆創膏は、100円ショップで販売されている安いものでかまわず、2cm×7cm程度の標準サイズでOK。ただし、粘着力が落ちるので1回ごとに使い捨てとなる。

貼り方は、絆創膏の剥離紙の半分をはがして皮膚に貼り、わずかに伸長しながら残り半分を止める。コツはこれだけだ。

具体例として、中高年の多くが悩む五十肩のセルフケアを紹介しよう。

我々は手を上げるとき、鎖骨の付け根にある胸鎖関節を軸にしている。五十肩とは、その周囲に炎症が起き、その軸回転が損なわれた状態を指す。そこで、絆創膏を貼り鎖骨の動きをサポートする。

五十肩の絆創膏の貼り方(本書51pより)

上のイラストのように、鎖骨の内側の上側から絆創膏をスタート。斜め下に引っ張りながら貼り、胸骨に押し当てて関節を固定する。これで肩を動かす際の起点が固定されるので肩関節が回しやすくなる。

さらに、「+αテク」もある。下のイラストを参考にしながら、肩の骨の出っ張りを起点に真下、真横45度、斜め前45度、斜め後ろ45度の4カ所に下向きに絆創膏を貼る。こうすると棘上筋の癒着(山内さんは、「五十肩の黒幕」と呼ぶ)がはがれ、肩の動きがスムーズになるそうだ。

* * *

本書にはこのほか、首や肩のこり、腰痛、ひざ痛、睡眠時無呼吸症候群、便秘など、様々な不調に合わせた、絆創膏のセルフケアが掲載されている。もしあなたが、何かしら不調に悩まされているのなら、本書を読まれ、このお手軽なセルフケアを試してみてはいかがだろうか。

本書内イラスト:かざまりさ

【今日の健康に良い1冊】
『体の不調をすべて解決する 絆創膏を貼るだけ整体』

山内義弘著
定価1760円
KADOKAWA

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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