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リーバイス、2050年ネットゼロへ 地球規模の変革

SDGsの「今」

2025.3.13

創業当初から長持ちする製品を作り続けてきた「リーバイス(Levi’s)」。その製品は30以上の国・地域で製造され、110以上の国・地域で販売されている

SDGs(持続可能な開発目標)をめぐるファッション界の最前線を追う連載企画。本記事では、世界の誰もが知るアパレル企業「リーバイス(Levi’s)」(リーバイ・ストラウス&カンパニー)に注目する。主力のジーンズが象徴する気さくでカジュアルなイメージとは別に、真摯すぎるほど熱心に環境問題に取り組む、その横顔を紹介しよう。




循環性で高評価 環境保全は1990年代から

「サステナビリティー(持続可能性)」、「サーキュラリティー(循環性)」……。今日のファッション業界では、どのブランドもこうした発信に力を入れている。

だが、「ごく少数の例外を除いて、実態は伴っていない」と指摘するのは、米コンサルティング大手のA.T. カーニー。同社は「サーキュラー・ファッション・インデックス(CFX)」と題して、ファッション製品の循環性についての企業努力を評価していることで知られる。

ファッション業界が循環型モデルへの転換に苦戦するなか、循環性を評価する前述のCFXにおいて、2024年度まで4年連続で業績トップ10にランクインしているのが、リーバイスだ。

ジーンズの代名詞、リーバイス。実はそのサステナビリティー歴は、かなり長くて深い。生産過程での節水加工技術やオーガニック素材の使用に注力するなど、1990年代初頭から地球環境保全のための試みを繰り返してきた。

ネットゼロ達成へ、明確な道筋を戦略として発表

やがて2018年、科学的知見に基づき温暖化ガス(GHG)削減目標の設定を促す国際組織「SBTイニシアチブ(SBTi)」が承認した排出目標を初めて導入。「持続可能性を追求する旅」へ本格的に乗り出す。

2024年になると、リーバイスはサステナビリティー目標を強化。取り組みを排出削減にとどまらず、2050年までの「ネットゼロ」(温暖化ガスの実質排出ゼロ)達成といった内容に刷新し、その目標がSBTiによって承認されたのだ。

そして、どのようにネットゼロ目標を達成するのか、短期と長期の明確な道筋を詳述した新たなサステナビリティー戦略(題して「Climate Transition Plan:気候移行計画」)を発表した。

地球上で最も重要な資源、水を守り続けてきた歴史

キング・オブ・ジーンズ「Levi’s 501」を擁する世界的なアパレル企業は、環境問題への新たな取り組みによってどんな変化を巻き起こそうとしているのか。

米サンフランシスコのリーバイス本社でチーフ・サステナビリティー・オフィサー(CSO)を務める、ジェフリー・ホーグさんに聞いた。

リーバイ・ストラウス&カンパニーCSO、ジェフリー・ホーグさん

バイオテクノロジー、ファッション、食品・農業など、20年以上にわたり様々な業界でサステナビリティー分野の国際的な経験を積んだ後、2020年7月にリーバイスに入社。2022年9月に策定したリーバイス初の包括的なサステナビリティー戦略の取りまとめを指揮し、サステナビリティーレポート発表に導いた。また、初めての「循環型Levi's 501」ジーンズや植物由来の「Levi's Plant-Based (プラントベース)501」といった製品の開発、顧客に向けた「Buy Better, Wear Longer(良いものを、長く着よう)」キャンペーンの展開をサポート。初のCSOとして、サステナビリティー戦略の策定と統合、ビジネスへの実装をリードし続けている

──リーバイスのサステナビリティー活動の歩みについて教えてください

ジェフリーさん(以下敬称略) リーバイ・ストラウス&カンパニーは170年以上にわたり、業界と地域社会に大きな影響を与えることを目指してきました。サステナビリティーといえば、気候、消費、地域社会という3つの柱にまたがる、人と地球への影響を指します。

私たちは2018年に、SBTiの承認を得た、気候科学に基づく温暖化ガス排出目標を導入し、サプライヤーに対するグローバルな行動規範を設定した最初のアパレルブランドとなりました。

2022年より、環境負荷を低減する循環型デザインの導入を進めてきたリーバイス。同年、リサイクルデニムや衣服廃棄物からつくられた初めての「循環型LEVI'S 501」ジーンズを登場させた。続く2023年には、アイコンジーンズの150周年を祝して、植物由来の素材を用いた「Plant-Based 501」(写真左)や97%バイオベースの「501」(写真右)など3型をリリースし話題を呼ぶ

――グローバルな行動規範という点が目を引きます。

ジェフリー リーバイス製品は30以上の国・地域で製造され、110以上の国・地域で販売されています。実に世界人口の80%に相当する人々が、私たちの製品が売られている国・地域で暮らしているのです。

もっと過去の取り組みを振り返ると、2007年には、主力製品であるジーンズで(原材料調達から生産、廃棄まで一連の環境負荷を測る)ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施しました。

このほか、10年以上にわたりアパレル生産における水効率の最大化に焦点を当て、2011年には従来の仕上げ工程から96%の水を排除する一連の節水技術を生み出しました。以前は「Water < less(ウォーターレス)」技術と呼ばれていましたが、この水資源節約技術はオープンソース化され、業界全体でのイノベーション推進につながっています。

水の使用量を減らしてもデニム製品のクオリティーを維持するウォッシュの製法、「Water < Less」を2011年に導入。導入から2020年までに、累計約130億リットルの水を節約してきた