祖先の勲功によって代々高官を輩出する名家、賈家一族の貴公子・賈宝玉(か ほうぎょく)は、立身出世のための勉学を嫌い、詩を愛する自由奔放な青年。家長である賈母・史太君の寵愛を受け、壮麗な邸宅で若い才女たちに囲まれながら、何不自由なく遊び暮らしていた。
ある時、江南の塩政大臣であった林如海が、莫大な財産と一人娘の林黛玉(りん たいぎょく)を残して、この世を去る。一人残された黛玉は、母方の祖母である賈母を頼り、栄国府での暮らしを始める。神経質で嫉妬深く病弱ながらも、聡明で詩才に恵まれた黛玉こそが、宝玉の心を最も惹きつける存在だった。魂で結ばれたかのように引かれ合う2人だが、時に素直になれず、すれ違いを繰り返していた。
一方で、栄国府を訪れていた薛宝釵(せつ ほうさ)は、優雅で品行方正であったため、邸内の者からも慕われていた。宝釵が身に着ける金鎖には、宝玉の持つ〈通霊宝玉〉と対になる句が刻まれていた・・・。
一族のしきたりや嫉妬、欲望の中、宝玉に降りかかる運命と共に一族の悲劇が始まろうとしていた。