Introduction

原作「紅楼夢」は、「西遊記」「水滸伝」「三国志演義」と並ぶ中国古典文学の四大名著の一つとして、長年読み継がれてきた不朽の名作。清朝の貴族社会を背景に繰り広げられる壮大な人間ドラマは「源氏物語」と比較されることも多く、中国文学史上、最高の古典小説とも評され、今なお多くの読者を魅了し続けている。
原作の太虚幻境、元妃省親、黛玉葬花、宝玉被逼婚などの名シーンを選出し、原作の中で最もドラマチックな賈宝玉、林黛玉、薛宝釵の愛と悲劇の物語を軸に描くことで、壮大な物語を全く新しい視点から1本の青春映画として紡ぎ出した。

監督を務めるのは、チョウ・ユンファ主演の歴史超大作『孔子の教え』(2009)を手がけたフー・メイ(胡玫)。これまで数多くの歴史ドラマを手がけており、その手腕には定評がある。本作では「紅楼夢」の壮大な物語を忠実に描くことにこだわり、試行錯誤を重ね、脚本を完成させるまでに実に10年以上を費やした。
原作のもつ幻想的な世界観を、最新の撮影技術とハイレベルなVFXで見事に再現したことで、古典小説の傑作が時空を越えて現代の観客に訴えかけてくる。また作中では、現代交響音楽と中国の伝統的な民族音楽を融合させ、その素晴らしい音色と想いの込められた歌声が、観る者をさらに作品の世界へと誘う。豪華絢爛な建造物や華やかな衣装デザイン、そして圧倒的なスケール感と映像美――すべてが融合し、かつてない至極の『紅楼夢』が誕生した。
本作は、2024年10月に開催された東京国際映画祭提携イベント<2024東京・中国映画週間>にて上映され、見事に審査員特別賞に輝き、宝玉の母・王夫人を演じた楊童舒(ヤン・トンシュー)は最優秀助演俳優賞を受賞した。

Story

祖先の勲功によって代々高官を輩出する名家、賈家一族の貴公子・賈宝玉(か ほうぎょく)は、立身出世のための勉学を嫌い、詩を愛する自由奔放な青年。家長である賈母・史太君の寵愛を受け、壮麗な邸宅で若い才女たちに囲まれながら、何不自由なく遊び暮らしていた。
ある時、江南の塩政大臣であった林如海が、莫大な財産と一人娘の林黛玉(りん たいぎょく)を残して、この世を去る。一人残された黛玉は、母方の祖母である賈母を頼り、栄国府での暮らしを始める。神経質で嫉妬深く病弱ながらも、聡明で詩才に恵まれた黛玉こそが、宝玉の心を最も惹きつける存在だった。魂で結ばれたかのように引かれ合う2人だが、時に素直になれず、すれ違いを繰り返していた。
一方で、栄国府を訪れていた薛宝釵(せつ ほうさ)は、優雅で品行方正であったため、邸内の者からも慕われていた。宝釵が身に着ける金鎖には、宝玉の持つ〈通霊宝玉〉と対になる句が刻まれていた・・・。
一族のしきたりや嫉妬、欲望の中、宝玉に降りかかる運命と共に一族の悲劇が始まろうとしていた。

Character

  • 賈家一族の貴公子

    賈宝玉(か・ほうぎょく)

    賈家・栄国府の賈政と王夫人の間に生まれた次男。美貌に恵まれた貴公子で、立身出世のための勉学を嫌い、詩や文学を愛する自由奔放な美青年。〈通霊宝玉〉という特殊な玉を口に含んで生まれてきた。
  • 宝玉の父方の従妹で幼なじみ

    林黛玉(りん・たいぎょく)

    聡明だが、プライドが高くわがままで、生まれつき病弱な体質。宝玉と心惹かれ合う仲。両親を亡くし、賈家に身を寄せている。
    メインヒロインその一。
  • 賈家一族の貴公子

    賈宝玉(か・ほうぎょく)

    賈家・栄国府の賈政と王夫人の間に生まれた次男。美貌に恵まれた貴公子で、立身出世のための勉学を嫌い、詩や文学を愛する自由奔放な美青年。〈通霊宝玉〉という特殊な玉を口に含んで生まれてきた。
  • 宝玉の母方の従姉

    薛宝釵(せつ・ほうさ)

    健康的で美しく、品行方正で周りから慕われる。宝玉とは金玉の良縁で結ばれるとされる相手。家は裕福な皇商。
    メインヒロインその二。

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