お迎え現象(おむかえげんしょう)は、終末期患者が自らの死に臨み、すでに亡くなった家族や知人といった、通常見ることのできない事物を見る経験のことである。仏教における来迎とも類似する概念であるが、典型的な「お迎え」体験において阿弥陀如来といった神仏が現れることは少なく、明確な宗教性を帯びていない点に特徴がある。また、コミュニケーション可能な意識下での経験であることから、生命の危機から蘇生したときに経験される臨死体験とも異なるものである。 日本における在宅緩和医療の現場において、終末期患者のこうした「お迎え」体験が報告されることは珍しいことではない。医学的にはこうした体験は終末期に多々見られるせん妄の一種、あるいは夢として解釈されるが、文化的・宗教的背景を濃厚に有すること、さらには、患者本人やその遺族の精神的苦悩の緩和にとって意義深い役割を担いうることから、学術的研究の対象ともなっている。