2014年3月4日 会場レポート(前編)
日本最大級の規模を誇る店舗総合見本市「JAPAN SHOP 2014」が、2014年3月4日に東京ビッグサイトで幕を開けた。今年の展示では明確なトレンドがないように感じたが、これは決して否定的な発言ではない。さまざまな価値観が求められる現代において、いまや店舗設計に正論も正攻法もない。どこまでも多様化するユーザーのニーズを丁寧に汲み取り、細かに対応することこそ、まさに現在求められていることなのかもしれない。そんな柔軟性とサービス精神を持ち合わせた出展者の一部を紹介したい。
ライター:猪飼尚司
01.リンテックサインシステム
バリエーション豊富なサインディスプレイシステムを手がけるリンテックサインシステム。2020年の東京オリンピック開催に向けて、さらに日本の独自の和の表現に注目が集まるとして、主力商品の一つである内装用高級装飾シート「PAROI(パロア)」に、和をイメージした「炭」「紡」「錆」の3柄を追加(写真①)。不燃認定を取得しているほか、3D装飾加工にも対応しているので、多様なシーン、表現での展開が期待される。また、一枚のフィルムに積層出力することにより、表と裏で異なる図版をプリントでき、さらにシースルー効果も持つ「コントラヴィジョンORS」(写真②)や複数社のインクジェットプリンターに対応するという汎用性の高さが自慢の塩ビ壁紙「プリンテリアSO」(写真③)にも注目が集まっていた。
写真①
写真②
写真③
02.アイカ工業
愛知県のメラミン化粧板メーカー、アイカ工業は、同社初となる"構造体"にチャレンジ。アルミをフィルムラッピングした「オルティノ」の天井用ルーバーに、耐震天井仕様が登場した(写真①)。家具・什器に向けて開発された化粧板が内装材、そして構造体へとどんどん広がりを見せている。このほか、目透かし張り時の美しい収まりを目指し、メラミンの端を内部に巻き込んだ「セラール Rエッジ」を発表(写真②)。塗り壁材「ジョリパット」のブラックとホワイトには、より白いスーパーホワイトとより黒いスーパーブラックが追加される(写真③)など、従来モデルをさらにグレードアップさせている。また、社内の女性メンバーにより"メイクタイムから考えるトイレ空間"として提案された「エル・シリーズ」(写真④)には、あらゆる行動パターンをデザインで吸収しようとする努力が見受けられた。
写真①
写真②
写真③
写真④
03.タカショー
美しいガーデン空間の演出を目指すタカショーは、コントラクト向けに開発したデッキ材「エバーエコ ウッドCONTRACT」(写真①)を発表。従来厚み50mmが基本だったデッキ材に、30mm厚を追加し、床高の低い現場にも対応することを目指している。また、厚み3mmにも関わらず、高い耐候性を誇るアルミ複合材「エバーアートボード」(写真②)も新商品として発表。石目、木目など、自然素材に近い風合いを持つ全42色の幅広いバリエーションと、屋内外問わず使用できるという対応力が自慢だ。現状では見切り材や連結などの仕上げが考えられるが、現場の意見も参考に、さまざまな仕上げ法を今後は提案していきたいと担当者は語る。
写真①
写真②
04.ニチハ
セメントを主原料とした外壁材「窯業系サイディング」のトップメーカーであるニチハ。同社の製品は、製材する際に発生する背板や端材を木材チップに加工し、それを外壁材の原料として使用することで、木材の有効利用やCO2の削減(正確にはCO2を材料のなかに固定化する)に貢献してきた。1956年の創業当時から同社はこうした取り組みを行ってきたのだが、数年前より農林水産省が国産木材の利用を積極的に推進するようになったことから、ニチハの取り組みに再びスポットライトが当たることに。この取り組みで、同社は2013年のグッドデザイン賞を受賞している。
05.玉俊工業所
今年で創業100周年を迎える玉俊工業所。同社の熟練職人の発想から生まれたという「EXTO Wall System」は、そのフレキシビリティと高い機能性を誇る同社の人気商品だが、今回の展示では商品のシステムを発表するのではなく、パーツとしてどのように応用できるのかを具体的に提案するものになっていた。通常ならば壁面全面を覆うウォールハンギングシステムを、額のなかで切り取り、まるでフレームのなかに小さなショーケースをつくったような感じに(写真①)。誕生から10年以上経つ「スタンダード」だからこそ、過去を振り返りながら、そのなかから新しい表現や感性を見いだす必要があるという思いがこもった展示となった。額装以外にも、EXTO Wall Sytemに木目のフィルムを貼り、金属やモノトーンの印象が強い同商品に異なる表情を与えていたことも印象的だ(写真②)。
写真①
写真②
06.WATER PEARL
球体状の美しい水滴がなぜか止まって見えたり、逆流しているように見える不思議な噴水を手がけるウォーターパール。細かく点滅する光と粒状の水流のバランスによりこうした特殊な視覚効果が生まれているのだが、その原理を知らずとも、見るものは思わず近づいて感嘆の声を上げてしまう。このように命と密接に関係する「水」を素材とすることで、人間の感性に直感的に訴える新しいインテリアシステムを開発する同社は、最新作「アクアウォールパネル」を展示。厚み70mmのアクリルパネルのなかに、滝のような美しい水流を表現した。交換を必要としない腐らない特殊な水を循環させているため、給排水も一切不要。薄型で手間がかからないことから、さまざまな空間への対応が可能だと考えられる。
ウォーターパール動画
https://www.youtube.com/watch?v=_-yTT63ZW40
07.日本セキソー
緩衝材や積層段ボールの生産加工を行う日本セキソー。同社の「セキソーパネル」(写真①)は、サイン&ディスプレイ素材のなかでも特に軽量なので、取り扱いが簡単。ダイレクト印刷も可能なことから、多様なシーンでの展開が考えられる。これまでは主力の白パネル+白セキソーに加え黒いパネルあったものの、表面だけのカラーリングであり、小口の色み(ボール紙の色、もしくは白)が懸念されていた。今年のブースでは、新しい取り組みとして中芯も黒いバージョンが登場(写真②)。さらに美しい小口仕上がりのディスプレイや什器を製作することが可能になった。プラスチックの丸いジョイントで2枚のパネルを接合すれば、さらに強度がアップする(写真③)。組み立て・解体の手間が簡単なこともあり、繰り返し使うことができるというのも強みだ。
写真①
写真②
写真③
08.荒川技研工業
ピクチャーレールや各種ワイヤーシステムを開発する荒川技研工業。今年の展示では、木の空間に合うワイヤー金具を提案していた。木材に10Mの鬼目ナットに埋め込み、それとワイヤー金具を連結させることで空間を仕切ったり、演出したりすることができるようになった(写真①)。また、これまで900mmまでのワイドが限界だったパイプハンガーに1800mmのロングタイプが登場(写真②)。直径を32mmと太くし、強度を増したことで可能になったデザインだ。商品の特長を活かしながら、外部デザイナーと協働しながらつくったというブースのデザインにも注目が集まっていた。
写真①
写真②
09.カシオ計算機
プロジェクターに使用されていた水銀ランプは、環境への配慮から各メーカー生産を中止する方向に動いているが、業界でもいち早くこの方向に動いたと言われているのがカシオだ。「水銀に関する水俣条約」がジュネーヴで提案されたのは去年の1月だが、カシオが水銀ゼロの方向へと動き出したのはおよそ3年前。現在では全ての商品で水銀ランプの代わりに、レーザー&LED光源を使用しているという。これにより環境への負担が軽減されただけでなく、消費電力もマイナスに。また、ランプの温度管理の必要性も減ったことから、プロジェクターを横置きだけでなく、縦に置いたり、天井から逆さに吊るしたりする多様性も生まれた(写真①)。
写真①
10.トライテラス
LEDを使った内装や照明システムを提案するトライテラス。これまでサインシステムが主な活動であったが、さらに表現域を広げるためのトライアルを積極的に重ねている。最新の取り組みとして、パネル内部のLED光源を2重にし、前方のLEDはすべて同色で連動。後方のLEDの色は一点ずつ色を変えることで、グラデーションとくっきりとした光が同居する不思議な表現が生まれた(写真①)。また、ネオンサインのように見せるルーター加工や、多彩な模様を描き出すレーザー加工など、アクリルの加工法により演出を変えるなど、新しい"あかりのかたち"の豊かなバリエーションを提案している。
写真①
11.フクダサインボード
大型のネオンや電飾看板を得意とするフクダサインボードの新商品「wiring -free」(写真①)は、配線を一切使わず、取り外しや移動を簡単にした"光るサイン"だ。2本の背面レールから微弱な電力を供給し、それをサインの裏につけたフック端子で受け取るという仕組み。電力は5ボルト程度なので、直接手で触れても影響はなく安心だという。完全受注生産なので、サイズやカラーは柔軟に対応可能。
写真①
12.ADVANCE SECURITY
アドバンスセキュリティーでは、スマートフォンやカメラなど、小型電子デバイスの展示を邪魔をせず、同時に万引き防止のためのセキュリティシステム「In Vue」を販売しているが、これまでデバイスごとに分かれていた電子キーを共通化。さらにショーウィンドウの鍵にも同様のシステムを展開したことで、鍵管理の煩雑さを軽減した(写真①)。これにより量販店の販売員が、腰からジャラジャラと複数の鍵を下げている姿もなくなるかもれしないとのこと。また、同社のグループ会社、アドバンスエコロジーでは、オゾンを応用した高度な空気清浄と水洗浄を実現する機器も販売(写真②)。空気清浄器はすでに東京消防庁の救急車内で使用されており、今後、病院や高齢者施設、飲食施設などの利用が期待される。
写真①
写真②