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瑞雲 (航空機)

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愛知 E16A 瑞雲

瑞雲(ずいうん)は、愛知航空機が生産した大日本帝国海軍(日本海軍)の水上偵察機である。機体略番はE16A。連合国コードネームは“Paul”(ポール)。

開発史

日本海軍は十二試二座水上偵察機において水上偵察機と爆撃機の統合を図り、250キロ爆弾を搭載して急降下爆撃できる能力を求めた(計画要求審議の場では、水上観測機戦闘機兼偵察機)と水上偵察機(爆撃機兼偵察機)の機種統合の可能性も論じられている)。航空兵力で劣勢の日本海軍が、巡洋艦搭載の水上急降下爆撃機によって劣勢を覆そうという構想により、期待された機種であったが、開発は難航し、瑞雲においてようやく統合されたのである。

1940年昭和15年)2月に愛知航空機に試作指示が出されたが、最大速度463 km/h以上、最大航続力2,500 km以上、格闘性能良好で急降下爆撃が可能というかなり厳しい要求であった。愛知ではこれに基づいて十四試二座水上偵察機(1941年(昭和16年)に十六試水上偵察機と改称)の開発を開始し、1942年(昭和17年)3月に試作1号機を完成させた。性能試験の結果同年11月に採用が内定し、その後の実用試験を経て1943年(昭和18年)8月に瑞雲一一型として制式採用された。

機体構造

機体は超々ジュラルミンでできており速度面を中心とした高性能を実現するため、胴体主翼はスリム化されている。フロート支柱部分には水上機としては世界初の急降下爆撃用のダイブブレーキを備えており、他機種にみられる両開きや片開きではなく、支柱後部の1枚板が90度近く回転する瑞雲独特の構造のものであった[1][2]。主翼には空戦フラップを装備しており、単に水上爆撃機に限らず、急降下爆撃機として異例の事である。もとより急降下爆撃機は戦闘機をある程度兼務し、そのための照準器機銃を搭載し、空戦を行った例も多いが、空戦フラップを採用した例は珍しい。

量産型においては、エンジン武装の強化の他、機体構造の強化が行われている。また、急降下中に空中分解事故が発生したことから、ダイブブレーキにスリット状の穴をあける改修も行われた。下記の諸元表が示すとおり、本機は水上機としては当時の各国機種の中でも性能・攻撃力とも優れており、傑作と言える機体であった。

運用・生産

1944年(昭和19年)春から部隊配属が開始され、フィリピン方面での夜間爆撃等に使用された。特に魚雷艇攻撃においては、それなりの戦果を示している。その後の沖縄戦でも爆撃や哨戒に利用されたが、この頃になると戦況の悪化に伴い、本機のような水上機の活躍できる場面はほとんどない。

第六三四航空隊に配備された機体は、後部に航空甲板の改装を受けた戦艦の伊勢・日向に搭載して訓練を積んでいたが、六三四空は両艦の実戦投入前にフィリピン方面に転出したため、航空戦艦搭載機としての実戦参加は果たせなかった。だが、六三四空はその後フィリピン・沖縄方面で偵察・夜襲襲撃任務などに従事し、大戦末期の劣勢の中で特攻によらない通常攻撃で一定の戦果を挙げた数少ない事例となった。

総生産数は約220機。ほとんどの生産型は一一型だが、エンジンを金星六二型に換装した一二型が1945年(昭和20年)に試作されている。

現存機は無いが、フィリピン沖に沈んでいる機体が確認されている。

スペック

  • 全長:10.84 m
  • 全幅:12.80 m
  • 全高:4.74 m
  • 主翼面積:28.00 m2
  • 全装備重量:3,800 kg
  • 最高速度:448 km/h
  • 乗員:2名
  • 発動機:三菱金星五四型(1,300 hp)
  • 航続距離:2,535 km
  • 実用上昇限度:10,280 m
  • 武装:
    • 20 mm機関砲×2
    • 7.7 mm旋回機銃×1(初期型)・13 mm旋回機銃(量産型)
    • 60 kg爆弾×2~3または250 kg爆弾×1

関連項目

脚注

  1. ^ 精密図面を読む3 p99
  2. ^ 瑞雲の写真は支柱部分の構造が鮮明なものが少なく、戦後発表されている図画や模型などのほとんどでダイブブレーキが両開き構造と誤解されている。

参考文献

  • 今井仁編・兼発行人『日本軍用機の全貌』 酣燈社、1953年、149–150頁。
  • 松葉稔作画/解説 別冊航空情報『航空機の原点 精密図面を読む3 第2次大戦の攻撃機/偵察機編』 酣燈社、1997年改訂版、90-99頁。

外部リンク

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