慢性腎臓病(まんせい・じんぞうびょう、英語: Chronic Kidney Disease; CKD[1])とは、慢性経過の腎不全について、その未病状態から末期までを包括する概念。

慢性腎臓病
概要
診療科 腎臓学
分類および外部参照情報
ICD-10 N03
ICD-9-CM 585 403
DiseasesDB 11288
MedlinePlus 000471
eMedicine med/374
Patient UK 慢性腎臓病
MeSH D007676

概要

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慢性経過の腎臓病については、古くより慢性腎不全(CRF)という概念が使われてきた。しかし、CRFにまで至らない状態(predisease)であっても、心血管疾患(CVD: CardioVascular Disease)が併発するリスクは高く、また、容易にCRFにまで発展することから、より大きな概念として提唱されたのが慢性腎臓病(CKD)である。

CKDの定義は、

  1. 尿検査、画像・病理診断や身体所見などにおいて、血液腎障害を示唆する所見が明らかである。特にタンパク尿
  2. 糸球体濾過量(GFR)が60 mL/min/1.73m2未満に低下している。

のいずれか、または両方が3カ月以上持続することである。原疾患、GFR区分、蛋白尿区分によって、下表のようにステージ分類されステージが上昇するほどリスクは上昇する。

CKDの重症度分類 (エビデンスに基づくCKD診療ガイド2013より引用)
原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量 (mg/日)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30 未満 30から299 300以上
高血圧腎炎、多発性嚢胞症、腎移植、その他 尿蛋白量(g/日)
尿蛋白/Cr比(g/gCr)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
0.15未満 0.15 - 0.49 0.50以上
GFR区分
(m L/分/1.73m2)
G1 正常または正常高値 90以上 付加リスク無し 低リスク 中等リスク
G2 正常または軽度低下 89以下、60以上 付加リスク無し 低リスク 中等リスク
G3a 軽度から中等度低下 59以下、45以上 低リスク 中等リスク 高リスク
G3b 中等度から高度低下 44以下、30以上 中等リスク 高リスク 高リスク
G4 高度低下 29以下、15以上 高リスク 高リスク 高リスク
G5 末期腎不全(ESKD; 旧CRF) 15未満 高リスク 高リスク 高リスク

CKDステージ3以上の患者は、20歳以上の日本人においては約1,926万人いるものと推定されている。CKDの概念において、従来の慢性腎不全(CRF)は、その終末期であるステージ5、いわゆる末期腎臓病(ESRD: End stage renal disease)として再定義され、CKDの下位概念となっている。腎機能の低下は自覚症状がないまま、数カ月から数十年かけて進み、ESRDの状態では、失われた機能が回復する見込みはほとんどない[2]

エビデンス・ガイドライン

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CKDに伴う高血圧の治療に関しては、いくつかの臨床研究がなされている。

CKDの発症には、メタボリックシンドロームなどによる動脈硬化症が重大なリスク要因となることから、腎障害所見やGFR値低下が出現する以前のハイリスク群についても、ガイドラインでは取り上げられている。

  • 2型糖尿病を合併した慢性腎臓病患者においては、どの薬剤の組み合わせであっても、血圧降下薬は生存率を延長させなかったとの報告もある[6]

脚注

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  1. ^ 柳田素子「メディカルジャーナル 腎臓が危ない!注目される急性腎障害」、『きょうの健康』2017年11月号、NHK出版、 96頁。
  2. ^ 腎臓病とは | 腎臓病について | 一般社団法人 全国腎臓病協議会(全腎協)”. www.zjk.or.jp. 2025年1月5日閲覧。
  3. ^ Bakris GL, et al.: Effects of different ACE inhibitor combinations on albuminuria; results of the GUARD study. Kidney Int 73: 1303-1309, 2008
  4. ^ Fujita T, et al.: Antiproteinuric effect of the calcium channel blocker cilnidipine added to renin-angiotensin inhibition in hypertensive patients with chronic renal disease. Kidney Int 72: 1543-1549, 2007
  5. ^ Parving HH, et al.: Aliskiren combined with losartan in type 2 diabetes and nephropathy. N Eng J Med 358: 2433-2446, 2008
  6. ^ Palmer SC, et al. Comparative efficacy and safety of blood pressure-lowering agents in adults with diabetes and kidney disease: a network meta-analysis. Lancet. 2015 May 23;385(9982);2047-56. doi:10.1016/S0140-6736(14)62459-4.

参考文献

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外部リンク

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