"ブルーベリー・ヒル" (Blueberry Hill)は1940年に出版されたアメリカ合衆国のポップス曲で、1940年にサミー・ケイRCAレコードからリリースしたものが初のリリースである。1950年代にリリースされたファッツ・ドミノロックンロール・バージョンが最もよく知られている。

ブルーベリー・ヒル
楽曲
英語名Blueberry Hill
出版1940年、 チャペル& Co.(ニューヨーク)
ジャンル
作曲者ヴィンセント・ローズ
作詞者
  • ラリー・ストック
  • アル・ルイス

レイ・エバリーをヴォーカルにフィーチャーしたグレン・ミラーのバージョンは1940年にRCAブルーバード・レコードよりリリースされ、ビルボードのポップス・シングル・チャートの2位を記録した。

概要

編集

ブルーベリー・ヒル」の音楽はヴィンセント・ローズによって作曲され、作詞はラリー・ストックとアル・ルイスが手がけている[1]

1940年に チャペル& Co.が購入し出版する以前に、別の大手出版社に持ち込んだものの出版を断られている。ストックによると、その理由としてブルーベリーは丘では育たないだろうと言われたとしている。ストックは、自身が幼少期に丘でブルーベリーを摘んだことを説明したが契約には至らなかった。そのため、その出版社を諦めチャペル& Co.と契約した[2]。同年のうちにこの曲は10回以上レコーディングされることとなった。

映画での使用

編集

当初は、ルー・ランダーズ監督の西部劇映画「ザ・シンギング・ヒル英語版」(1941年)のために用意された曲だった。映画の中ではジーン・オートリーが主演し、この曲を歌っている[3]

歌詞

編集

かつてブルーベリーの丘で愛する人と過ごした幸せな日々を回想した内容。今はその恋人を失い、しかしその人のことを忘れられないという切ない気持ちを郷愁を持った曲調で表現している[3][4]

レコーディング

編集

この曲の最初のバージョンは、トミー・ライアンをヴォーカリストにサミー・ケイが1940年5月31日にレコーディングし、RCAビクターよりリリースとなった[5][6]

1940年の最初のヒットで最も成功したバージョンはグレン・ミラー・オーケストラによるもので、レイ・エバリーをヴォーカルにフィーチャーし、ビルボードの米国のチャートの2位を記録した[7] 。このバージョンは1940年5月13日にシカゴでレコーディングされ、RCAのブルーバード・レコードよりカタログ番号B-10768-Aでリリースされた。英国ではEMIヒズ・マスターズ・ヴォイス (HMV)レーベルよりカタログ番号BD 5632及びMH 92でリリースとなった。

ルイ・アームストロングがゴードン・ジェンキンズと行なった1949年のデッカ・レコードへのレコーディングはビルボード・トップ40の29位を記録した。このレコーディングをファッツ・ドミノが耳にしたことが、彼の1956年のカバーが生まれるきっかけとなっている[8]

ファッツ・ドミノのバージョン

編集
「ブルーベリー・ヒル」
ファッツ・ドミノシングル
B面 Honey Chile
リリース
規格 7インチ・シングル
録音
[9][8]
ジャンル
時間
レーベル インペリアル 5407
作詞
  • ラリー・ストック
  • アル・ルイス
作曲 ヴィンセント・ローズ
プロデュース デイヴ・バーソロミュー
チャート最高順位
  • 2位 (ビルボード トップ40)
  • 1位 (ビルボード R&Bチャート)
ファッツ・ドミノ シングル 年表
When My Dreamboat Comes Home (1956年)Blueberry Hill (1956年)The Rooster Song (1957年)
テンプレートを表示

ブルーベリー・ヒル」は1956年にファッツ・ドミノが国際的にヒットさせ、ロックンロールのスタンダード曲となった。ビルボード・トップ40チャートの2位に2週間在位し、ファッツの最大のポップ・ヒットとなっている。また、R&Bベスト・セラーズ・チャートでは8週間連続で1位を記録した[10]。ファッツ・ドミノのバージョンは、またローリングストーン誌の「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」の82位にランクインしている[11][12]

ハリウッドで行なわれたレコーディングはうまく行かなかった。ファッツのプロデューサーだったデイヴ・バーソロミューは、この曲は既に多くのアーティストにレコーディングされており、ファッツのスタイルとは違うとと感じていたがインペリアルのルー・チャッドはそれに異議を唱えた。エンジニアのバニー・ロビンは失敗に終わった3つのレコーディングをうまくつなぎ合わせることにより最終バージョンを完成させ、リリースに漕ぎつけた[8]

参加ミュージシャン

編集

[13]

その他のバージョン

編集

非常に多くのアーティストによって取り上げられているため、ここに挙げられたのはそのごく一部である。

アーティスト名 収録アルバム
1957年 エルヴィス・プレスリー Loving You
1958年 パット・ブーン Star Dust
1960年 ビル・ヘイリー・アンド・ヒズ・コメッツ Bill Haley and His Comets
1960年 ブレンダ・リー This Is Brenda
1960年 チャビー・チェッカー For Twisters Only
1962年 クリフ・リチャード・ウィズ・ザ・シャドウズ 32 Minutes and 17 Seconds with Cliff Richard
1964年 リトル・リチャード Little Richard Is Back (And There's a Whole Lotta Shakin' Goin' On)
1965年 チャールズ・ブラウン Ballads My Way
1971年 ウィルバート・ハリスン Wilbert Harrison
1972年 ロレッタ・リン One's on the Way
1973年 ジェリー・リー・ルイス Southern Roots - Back Home to Memphis
1976年 ザ・ビーチ・ボーイズ 15 Big Ones
1999年 ブルース・コバーン Breakfast in New Orleans Dinner in Timbuktu
2023年 ヴァン・モリソン Accentuate the Positive

[14]


大衆文化への広がり

編集
  • ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンは、2010年12月10日、病気に苦しむ子供たちのチャリティの目的で国際的な映画およびテレビの有名人を前に、この曲のパフォーマンスを披露した。その映像は瞬く間に世界中に拡散されることとなった[19]

脚注

編集
  1. ^ Blueberry Hill Work ID: 320068128 – Writers”. ACE Repertory. 2018年4月14日閲覧。
  2. ^ Larry Stock | Songwriters Hall of Fame”. www.songhall.org. 2024年3月14日閲覧。
  3. ^ a b Blueberry Hill by Fats Domino”. Songfacts. 2024年12月3日閲覧。
  4. ^ The meaning of Blueberry Hill by Fats Domino”. Lyrical Insight. 2024年12月3日閲覧。
  5. ^ カタログ番号26643、B面は"Maybe"、マトリックス番号51050
  6. ^ Blueberry Hill by Sammy Kaye (Discogs) 2023年10月7日閲覧
  7. ^ Whitburn, Joel (2002). Pop Hits, Singles and Albums 1940-1954 
  8. ^ a b c “Blueberry Hill”—Fats Domino (1956)”. アメリカ議会図書館. 2024年12月3日閲覧。
  9. ^ Coleman, Rick (2007). Blue Monday: Fats Domino and the Lost Dawn of Rock 'n' Roll. カリフォルニア州オークランド: ダ・カーポ・プレス. p. 416. ISBN 9780306815317 
  10. ^ Whitburn, Joel (2004). Top R&B/Hip-Hop Singles: 1942-2004. Record Research. p. 167 
  11. ^ 500 Greatest Songs of All Time: Fats Domino, 'Blueberry Hill'”. Rolling Stone (2011年4月7日). 2024年12月2日閲覧。
  12. ^ 500 Greatest Songs of All Time: Fats Domino, 'Blueberry Hill' | Rolling Stone”. www.rollingstone.com. 2011年12月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月13日閲覧。
  13. ^ MUSC-21600: The Art of Rock Music - Prof. Freeze, Blueberry Hill (1956) Fats Domino”. ウースター大学. 2024年12月3日閲覧。
  14. ^ Song-Blueberry Hill (SecondHandSongs) 2024年12月3日閲覧
  15. ^ Terrace, Vincent (2006). Television characters : 1,485 profiles, 1947-2004. Jefferson NC: McFarland. p. 335/941. ISBN 0786421916. https://archive.org/details/televisioncharac0000terr/page/334/mode/2up. "リッチーはしばしば出だしの歌詞"I found my thrill on Blueberry Hill"を歌ったことから、この曲は彼のトレードマークになった。" 
  16. ^ Marshall, Garry (1995). Wake me when it's funny. Adams Pub.. p. 14. ISBN 1558505261. https://archive.org/details/wakemewhenitsfun00mars/page/14/mode/2up 
  17. ^ West, Beverly; Bergund, Jason (2005). TV therapy : the television guide to life. New York City NY: Delta Trade Paperbacks. p. 83. ISBN 0-385-33902-X. https://archive.org/details/tvtherapytelevis00west/page/82/mode/2up. "...そしてこれがブルーベリー・ヒルに彼のスリルを見つけるための歴史上最も驚くべき格子縞のボタンダウンのコレクションだ。" 
  18. ^ Medlin, Jarrett (2012年8月16日). “Blueberry Hill Turns 40”. en:St. Louis Magazine. 2024年12月2日閲覧。
  19. ^ Martel, Frances (2010年12月11日). “This Exists: Vladimir Putin Serenades Audience With Rendition Of 'Blueberry Hill'”. Mediaite.com. 2024年12月2日閲覧。