ろくろ首
ろくろ首(ろくろくび・ろくろっくび)は、日本の妖怪の一種。大別して首が伸びるものと、首が抜け頭部が自由に飛行するものの二種が存在する。
特徴
いずれも外見上は普通の人間とほとんど変わらない。 首が伸びるタイプはろくろを回して陶器を作る際に粘土が長く伸びるように、異常に長く伸び縮みする首を持つ。このろくろ首は夜になると首を伸ばして、屋内にある行灯の油を好んで舐めるかまたは人間や他の生物の精気を吸い取るとされる。江戸時代以降、見世物小屋やお化け屋敷の定番的な存在となっている。
首が胴体から離れるタイプのろくろ首は、中国の妖怪「飛頭蛮」(ひとうばん、頭が胴体から離れて浮遊する妖怪)に由来するとも言われており、小泉八雲の作品『ろくろ首』にはこのいわゆる抜け首が登場する。この首が抜けるタイプのろくろ首は、夜間に人間などを襲い、血を吸うなどの悪さをするとされるが、首の抜けている間に胴体を隠す事で退治できると言われる。
基本的に女性であることが多い。
似たものでは、マレーシアにも「ポンティアナ」という妖怪の話が伝えられる。 こちらは首だけではなく、頭部に臓物がついてくる形で体から抜け出て、浮遊するというものである。
また、南米のチョンチョンも、人間の頭だけが空を飛び回るという姿をしており、人の魂を吸い取るとされる。
落語『ろくろ首』
古典落語・怪談噺の演目。与太郎噺の一つ。この噺の「ろくろ首」は、夜な夜な少女の首が伸び、行灯の油を舐める“悪い病気”とされている。八代目林家正蔵(1982年・没)が有名。
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
兄が結婚し、子供も生まれたのを見てうらましがった与太郎は、「自分もお嫁さんがほしい。」と叔父に相談を持ちかける。最初は「お前に家族が養えるか。」と相手にしなかった叔父だが、近所のお屋敷に住む美人で財産家のお嬢さんの事を思い出し、与太郎に紹介してやろうとする。ただしそのお嬢さんは夜中に首が伸びて行灯の油を舐める「ろくろ首」で、これまで何度も結婚したものの、そのたびに婿に逃げられてしまい、困っているという。最初は尻込みしたものの、「自分は一度寝てしまえば夜中には目が覚めないから大丈夫だ。」と考えた与太郎は、見合いで失敗を繰り返しながらも何とかお嬢さんとの婚礼に漕ぎつける。しかし婚礼の晩、慣れない寝床のせいで目が覚めてしまい、横に寝ているお嬢さんを眺めていると、突然お嬢さんの首が伸びて行灯の油を舐め始めた。肝をつぶした与太郎はそのまま叔父のもとに駆け込み、「やっぱり駄目だ。」と泣きつく。困った叔父が「お前のお袋だって、家で、良い知らせを首を長くして待ってるんだぞ。」と言うと、与太郎驚いて「大変だ、それじゃ家にも帰れない!」。
落ちは「間抜け落ち」。
ろくろ首の「実話」の信憑性
首だけが胴体を離れて飛び回るタイプは論外として、「寝ている間に人間の首が伸びる」と言う話は江戸時代以降『武野俗談』『閑田耕筆』『夜窓鬼談』などの文献に「実話」としてたびたび登場する。しかし言うまでもなく、これらの話は興味本位に書かれたものであり、科学的な検証に堪えうるものではない。
(この節は書きかけです。医学的・生理学的な見地からの加筆・修正を求めています)
ろくろ首の描かれ方
ろくろ首は昔からおいらん遊女として描かれる場合が多いが小泉八雲の怪談では、もとは都人(みやこびと)で今は深山で木こりをしている一族、と見せかけて旅人を食い殺す、という設定で描かれている。
ろくろ首が登場する作品
- ゲゲゲの鬼太郎 (実写映画)では輪入道と夫婦という設定である。尚、アニメ版で登場することはあまりない。ただし、アニメ版第5期では妖怪横丁の住人として準レギュラー出演をしている。
- 1980年代には「ぬけ首」が登場する話も発表され、分離した頭は太陽並の高熱、胴はそれを抑えていた冷気を放出する。「胴を隠される」弱点は過熱として表現。