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|界= [[動物界]] [[w:Animalia|Animalia]]
|門= [[脊索動物門]] [[w:Chordata|Chordata]]
|亜門= [[脊椎動物|脊椎動物亜門]] [[w:Vertebrata|Vertebrata]]
|上綱= [[無顎上綱]] [[w:Agnatha|Agnatha]]
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'''ヤツメウナギ'''(八目鰻、lamprey)は、'''[[脊椎動物|脊椎動物亜門]]''','''[[円口類]]''','''ヤツメウナギ目'''に属す動物の一般名、ないし総称であり、河川を中心に世界中に分布している。
 
円口類はいわゆる「[[生きた化石]]」であり、ヤツメウナギと[[ヌタウナギ]]だけが現生している。

形状が一見似ている[[ウナギ]]とは根本的に異なる動物で、さらに「[[硬骨魚類|狭義の魚類]]」<ref>{{Cite web |和書|url=https://kotobank.jp/word/%E9%AD%9A%E9%A1%9E-53530 |title=魚類とは |accessdate=2022-01-31 |author=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 |website=コトバンク |quote=硬骨魚類(狭義の魚類で魚の大部分を占める) |language=ja}}<!-- Cite Kotobank も検討 --></ref>からも外れており、[[脊椎動物]]としても非常に原始的である。
 
== 生物学的特徴 ==
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File:Lamprey illustration side.png|外部形態
File:Petromyzontiformes mouths PZSL1851.png|様々なヤツメウナギ類の口器形態。歯はわれわれエナメル質などと異なり[[角質]]。
File:Jõesilmud2.jpg|''Lampetra fluviatilis''{"ヨーロッパカワヤツメ"(和名不詳)}
File:Flussneunauge.jpg|全身像
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ヤツメウナギの体の両側には7対の[[鰓孔]]があり、それが一見[[目|眼]]のようにみえることから、本来の眼とあわせて「八目」と呼ばれる。ドイツ語でも、7つの鰓孔、本来の眼、鼻孔が並ぶことから、ヤツメウナギには9つの眼があると考え、「9つの眼」を意味するノインアウゲン Neunaugenと呼んでいる。
 
[[鱗]]のない体は細長く「[[ウナギ]]型」。種によって体長13 - 100[[センチメートル|cm]]と幅がある。[[繁殖]]は淡水[[河川]]で行い、3[[ミリメートル|mm]]程度の黄色い卵を、種によって数百 - 数万個も産卵する。ひと月ほどで孵化すると、まず'''[[アンモシーテス]] (Ammocoetes) '''と呼ばれる[[幼生]]期を数年間過ごし、その後成体へと[[変態]]する。アンモシーテスとは、もともと新属として設けられた名称だったが、これがヤツメウナギの幼生と判明すると、その名称がそのまま幼生の呼称となった。アンモシーテス幼生の基本的な概形は成体に似るが、口は吸盤状でなく[[漏斗]]のようで、泥底に潜って水中から有機物を濾しとって食べている。また[[眼]]が未発達であり、外からはほとんど確認することができない。
 
変態後の生態は、種によって降海型と陸封型に大別される。カワヤツメなどは前者で、変態した若魚は2、3年海を[[回遊]]し、繁殖期になると再び河川を溯上する。スナヤツメなどは後者であり、秋に変態したのち、翌年春から初夏の繁殖期までの、生涯の残りの期間を淡水で過ごす。変態後は消化管も貧弱で餌を採らない種が多いが、アリナレスナヤツメのように河川内で寄生生活を送るものもいる。生活型に関わらず、全種が産卵後に死亡する。
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[[File:Origin of Vertebrates Fig 064.jpg|thumb|left|150px|アンモシーテス幼生の頭部を水平断にし、背側を見た図。Gaskell (1908)より。]]
* '''[[顎]]がない。'''ヤツメウナギの成体の口は[[吸盤]]状をしており、強い吸引機能がある。これで河底の石などに吸いついて、姿勢を保持することができる。またカワヤツメなど、一部の種ではこうした吸盤状の口で他の魚類などに取り付き、[[ヤスリ]]状の角質歯で傷を付けて体液を吸う。一見するとその様は大きな[[ヒル (動物)|ヒル]]が取り付いているようにも見える。
* '''[[歯]]'''は表皮が[[角質]]化(角化)したものである<ref name="kozawa">{{Cite book|和書 |author=[[小澤幸重]]|authorlink=小澤幸重 |title=エナメル質比較組織ノート |edition=第1版第1刷 |date=2006-04-25 |publisher=[[わかば出版]] |location=[[東京都]][[文京区]] |ncid=BA77166677 |isbn=4-89824-032-1 |page=13 |chapter=第2章 エナメル質以前 3 ヤツメウナギ}} </ref>。つまりわれわれヒトなどが顎にもつ歯とは異なり、むしろ[[爪]]や毛に近いが、これらのように連続的に角化するのでなく、周期的に角化し、一つの歯が脱落すると次の歯が出てくる形になる<ref name="kozawa" />。
* '''[[鰓孔]]'''が体の両側に7対開口する。
* '''[[外鼻孔]]'''は、1対開口する顎口類とは異なり、単一のみで、頭頂に開口する。鼻管は盲嚢状。
* '''[[内耳]]'''には[[半規管]]2つだけがあり、これも[[三半規管]]がある顎口類とは異なる<ref name=Janvier1996>Janvier, Philippe.(1996) ''Early Vertebrates''. Oxford University Press </ref>。
 
以上のように、現在の顎口類には全く見られなくなった特徴が多くある。つまりこうした顎や対鰭、鼻孔などは、少なくとも顎口類がヤツメウナギなど円口類と分岐し独自に獲得したものだと考えられる。しかし、成体では[[眼]]が大きく、よく発達した[[レンズ]]や[[外眼筋]]も備えているなど、顎口類と共通した特徴も数多くあり、よってこうした形質は脊椎動物の最も初期の段階で既に獲得されていたものと考えられる。脊椎骨成分に関しては、ヤツメウナギで脊索背側の神経弓のみが、ヌタウナギで脊索腹側の痕跡的血管弓のみが認められるため、これらの共通祖先で既に脊索背腹両側に神経弓と血管弓を有する顎口類と同様の脊椎骨を有していたのに対し、両者の分岐後にヤツメウナギの系統では血管弓が、ヌタウナギの系統では神経弓が退化して失われ、さらに現生のヌタウナギの系統では残された血管弓すら殆ど失われて痕跡化したとする仮説が提案されている。
 
=== 免疫科学 ===
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[[日本]]国内の場合、食用とされるのはほとんど日本産カワヤツメである。約50-60cm。背側は黒青色で腹側は淡色。春に川を遡上し、5-6月に産卵する。[[日本海]]側では[[島根県]]以北、[[太平洋]]側では[[茨城県]]以北に分布している。[[北海道]]、[[新潟県]]、[[山形県]]、[[秋田県]]などの日本海に注ぐ河川で多く獲れる。産地である北海道[[江別市]]では、2001年までは毎年ヤツメウナギ祭りが開催されていた<ref>[http://www.ebetsushi.net/gurume/post_34.html ヤツメウナギ - 江別市ナビ]</ref>。
 
主に初春の寒い時に川で獲れる。東北、北海道などの東日本・[[日本海側]]が本場。肉が固くて[[モツ]]のような弾力と歯応えがあり、[[レバー (食材)|レバー]]牛脂と[[魚油]]とヤツメの匂いが混じった独特の風味を持つ。最近は漁獲量が減り、大きさも一般に小さくなって来ている。現在でも産地以外では鮮魚としてカワヤツメを得ることはほとんど不可能で、[[乾物]]か[[冷凍]]品ということになる。
 
産地のひとつである[[秋田県]]では、カワヤツメをぶつ切りにして[[醤油]]と[[出汁]]の濃い目のツユで[[すき焼き]]風に煮込む[[かやき]]が[[冬]]の味覚となっている。[[関東]]では[[蒲焼き]]を売り物にする料理店もある。また、[[縁日]]の[[屋台]]でもカワヤツメの[[蒲焼き]]が売られることがある。肝は特に栄養分が多いため、これを[[軟骨]]と共に[[ミンチ]]にして「肝焼き」として供することもある。ただし、クセが強いので好き嫌いは普通の蒲焼以上にはっきりとする。乾物は丸ごと[[白焼き]]にしたものを油が漏れ出さないように切り分け、[[佃煮]]風に甘辛く煮て食べる。2012年現在での都心では、台東区[[浅草]]で八ッ目鰻専門店、[[巣鴨]]でヤツメウナギを扱う飲食店が営業を続けている。このほかに季節限定でヤツメウナギ料理を出すウナギ料理店、珍味やスタミナ料理として出す居酒屋なども存在する。
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たとえば日本産カワヤツメは2005年頃まで''Lampetra japonica''とされていたが、のちに''Lethenteron japonicum''と属が変わった。2012年現在では、''Lethenteron camtschaticum''の[[シノニム]]ともされている<ref>{{FishBase_species|genus=Lethenteron|species=japonicum|year=2011|month=2}} "synonim"のページを参照 </ref>。
 
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* '''ヤツメウナギ科''' [[:en:Petromyzontidae|Petromyzontidae]]
** '''ヤツメウナギ亜科''' [[Petromyzontinae]]
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**** ''[[Ichthyomyzon gagei]]'' (Hubbs and Trautman, 1937)
**** ''[[Ichthyomyzon greeleyi]]'' (Hubbs and Trautman, 1937)
**** ''[[Ichthyomyzon unicuspis]]'' (Hubbs and Trautman, 1937) [[File:Diversas lampreas.1 - Aquarium Finisterrae.JPG|thumb|300px|ウミヤツメ
''Petromyzon marinus''。大西洋岸に生息する大型種。特に五大湖周辺では駆除の対象("人間との関係"に詳述)。]]
*** ウミヤツメ属 ''[[:en:Petromyzon|Petromyzon]]''(1種)
**** ''[[:en:Petromyzon marinus|Petromyzon marinus]]'' (Linnaeus, 1758) -: [[ウミヤツメ]] [[File:Diversas lampreas.1 - Aquarium Finisterrae.JPG|thumb|300px|ウミヤツメ
''Petromyzon marinus''。大西洋岸に生息する大型種。特に五大湖周辺では駆除の対象("「[[#人間との関係"]]」に詳述)。]]
** [[Lampetrinae]]
*** カスピヤツメ属 ''[[Caspiomyzon]]''(1種)
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*** ウクライナヤツメ属 ''[[Eudontomyzon]]''(4種)
*** ''[[Lampetra]]''属(7種)
**** ''[[:en:Lampetra fluviatilis|Lampetra fluviatilis]]'' (Linnaeus, 1758) -: ヨーロッパカワヤツメ
**** ''[[:en:Lampetra tridentata|Lampetra tridentata]]'' (Richardson, 1836) -: [[ミツバヤツメ]]
**** ''[[Lampetra morii]]'' (Berg, 1931) -: アリナレスナヤツメ
*** カワヤツメ属 ''[[Lethenteron]]''(6種)
*** カワヤツメ属 ''[[Lethenteron]]''(6種) [[File:Eastern-brook-lamprey L reissneri-01.jpg|thumb|250px|スナヤツメ''Lethenteron reissneri''。中国北部や朝鮮半島、九州以北の日本中の河川に広く分布する小型種。成体は何も食べず寄生も行わない。]]
**** ''[[Lethenteron camtschaticum]]'' (Tilesius, 1811)
**** ''[[:en:Lethenteron japonicum|Lethenteron japonicum]]'' (Martens, 1868) -: [[カワヤツメ]]
**** ''[[:en:Lethenteron kessleri|Lethenteron kessleri]]'' (Anikin, 1905) -: [[シベリアヤツメ]]
**** ''[[Lethenteron matsubarai]]'' (Vladykov and Kott, 1978)
**** ''[[:en:Lethenteron reissneri|Lethenteron reissneri]]'' (Dybowski, 1869) -: [[スナヤツメ]] [[File:Eastern-brook-lamprey L reissneri-01.jpg|thumb|250px|スナヤツメ''Lethenteron reissneri''。中国北部や朝鮮半島、九州以北の日本中の河川に広く分布する小型種。成体は何も食べず寄生も行わない。]]
**** ''[[Lethenteron zanandreai]]'' (Vladykov, 1955)
* '''ミナミヤツメ科''' [[:en:Geotriidae|Geotriidae]] [[File:Geotria australis.jpg|thumb|250px|フクロヤツメ''Geotria australis''。オセアニア・南米に生息。]]
** フクロヤツメ属 ''[[:en:Geotria|Geotria]]''(1種)
*** ''[[:en:Geotria australis|Geotria australis]]'' (Gray,1851) -: [[フクロヤツメ]] [[File:Geotria australis.jpg|thumb|250px|フクロヤツメ''Geotria australis''。オセアニア・南米に生息。]]
* '''モルダキア科''' [[:en:Mordaciidae|Mordaciidae]]
** モルダキア属 ''[[:en:Mordacia|Mordacia]]''(3種)
*** ''[[Mordacia lapicida]]'' (Gray, 1851) -: チリヤツメ
*** ''[[Mordacia mordax]]'' (Richardson, 1846) -: オーストラリアヤツメ
*** ''[[Mordacia praecox]]'' (Potter, 1968)
 
** '''✝Mayomyzontidae''' (絶滅群)
*** ''✝Mayomyzon''属 (1種)
**** ''[[:en:Mayomyzon pieckoensis|✝Mayomyzon pieckoensis]]''
}}
 
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== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
* {{citation |year=1999 |author=Hall, Brian K |title=The Neural Crest in Development and Evolution |place=New York |publisher=Springer-Verlag |isbn=0-387-98702-9 |url=httphttps://books.google.comco.jp/books?id=5PQ9p1oqoCcC&printsec=frontcover&dq=%22The+Neural+Crest%22&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false}}
* Inliis GD. Pulera D. (2010) The Dissection of Vertebrates, Second Edition. Academic Press, ISBN 0-12-375060-1
* Janvier, Philippe. 1996, 2003. ''[httphttps://books.google.nl/books?id=GmvMHQAACAAJ&dq=philippe+janvier Early Vertebrates (1996)]; [httphttps://books.google.nl/books?id=r0RsouK0xMkC&dq=philippe+janvier&printsec=frontcover&source=bl&ots=dTbybMmJlS&sig=tu9JJaNYo-4WSlo1f7gak-6LdJ4&hl=nl&sa=X&oi=book_result&resnum=5&ct=result Early Vertebrates (2003)]''. Oxford Monographs on Geology and Geophysics, v. 33, Oxford University Press, Oxford, England, 392 pp. ISBN 0-19-854047-7 - a comprehensive review of the phylogyny and technical characteristics of Paleozoic fish
* Kardong, K. (2008). Vertebrates: Comparative anatomy, function, evolution,(5th ed.). Boston: McGraw-Hill, ISBN 0-07-297008-1
* Nelson JS, Fishes of the World (4th ed), New York, John Wiley & Sons INC, 2006, ISBN 0-471-25031-7
* 岩槻邦男・馬渡峻輔監修;松井正文編集、『脊椎動物の多様性と系統』、バイオディバーシティ・シリーズ7 ([[裳華房]])、2006年、ISBN 978-4-7853-5828-0
* 寺島良安 『[[和漢三才図会]]』50巻408頁 河湖無鱗魚 やつめうなき, 1888年
==関連項目==
*[[殺ヤツメ剤]] - ヤツメウナギ類の魚類への寄生を防ぐ薬剤。
 
{{Normdaten}}
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[[Category:食用魚]]
[[Category:吸血]]
[[Category:冬の季語]]