削除された内容 追加された内容
脚注を編集 (ProveIt使用) #proveit ギャラリー追加。
 
(36人の利用者による、間の45版が非表示)
1行目:
{{otheruses|生物全般の歯|人間歯|ヒトの歯|生物以外の用法|歯 (曖昧さ回避)}}
'''歯'''(は、{{lang-en-short|tooth}})は、[[口腔]]内にある[[咀嚼]]するための一番目の[[器官]]。
{{Infobox 解剖学
|Name = 歯
|Image = Teeth by David Shankbone.jpg
|Caption = 成年男性の歯
|Image2 = Denticao.jpg
|Caption2 = 内側からの[[Computer Generated Imagery|CG画像]]
|Dorlands = eight/000109449
|DorlandsID = Tooth
}}
[[File:Cross sections of teeth intl.svg|thumb|300px|歯]]
'''歯'''(は、{{lang-en-short|tooth}})は、[[口腔]]内にある[[咀嚼]]するための一番目の[[器官]]。人体でもっとも硬く、遺体ではその治療状況によって人物の特定の重要な手掛かりとなる。[[人工歯]]と区別する意味で'''天然歯'''と言うこともある。多くの種類の構造を持ち、それぞれが異なる目的を果たす。[[歯学]]では、過去には'''歯牙'''(しが)と言ったが、現在は使わない傾向にある。
 
多くの[[脊椎動物]]が持つ。[[ヒト]]は[[乳歯]]と[[永久歯]]の二組を持つが(二生歯性)、[[ネズミ目]]のように一組の歯が伸び続ける動物もいれば(一生歯性)、[[サメ]]のように、二週間に一組ずつ新しい歯が作られていく動物もいる(多生歯性)。[[化石]]化した哺乳類においてもっとも特徴的な部位であり、古生物学者達は化石の種類や関係を鑑別するのにしばしば歯を使う。
また、それに似たものを歯ということがある。例えば[[歯車]]、鋸歯など。
 
歯の部位を示すために、歯の内側を[[舌]]側、[[口蓋]]側、外側を[[唇]]側、[[頬]]側、正中に近い方を近心、反対側を遠心、上端<ref group="註">下顎の歯の場合。上顎の歯の場合は下端。</ref>を切縁、[[咬合]]面という。
 
多くの高等動物が持つ。人間は[[乳歯]]と[[永久歯]]の二組を持つが(二生歯性)、[[ネズミ目]]のように一組の歯が伸び続ける動物もいれば(一生歯性)、[[サメ]]のように、二週間に一組ずつ新しい歯が作られていく動物もいる(多生歯性)。[[化石]]化した哺乳類においてもっとも特徴的な部位であり、古生物学者達は化石の種類や関係を鑑別するのにしばしば歯を使う。<!--生物学における歯については[[歯 (生物学)]]参照。-->
歯は摂食の際の重要な構造であり、その形は餌のタイプと強く結びついている。
 
== 動物一般における歯 ==
=== 動物一般 ===
動物一般における歯は、[[口]]周辺、あるいは内部にある構造で、小さくて硬く、その表面に突き出ていて、その動物の摂食の際に役立つと考えられるものである。細長いものは棘などと言われ、歯として扱わない。脊椎動物以外で歯と言われる部位を持つ例としては、[[多毛類]]、[[ヤムシ]]類などがある。
 
また、[[節足動物]]を持つ動物の口器では、その顎の硬化部分にギザギザした突起がある場合、これを歯という例もある。[[クモ]]の[[鋏角]]や[[昆虫]]の[[大顎]]などに例がある。
 
その他、[[軟体動物]]では舌状の構造の上に歯が並ぶ[[歯舌]]を持っている。
 
=== 脊椎動物 ===
[[File:JAPANESE-Wild boar-tooth.jpg|thumb|ニホンイノシシの歯]]
{{See also|牙}}
[[脊椎動物]]では、歯を持つものは数多い。人間の歯は顎の骨に強く固定されているが、両者の結びつきはそれほど古いことではない。このように強く結びついているのは、ほぼ[[ほ乳類]]の特徴である。
 
[[サメ]]類においては歯は何列にも並んでおり、欠けるとすぐさま次の列から補充される。これはほぼそのままに皮膚に繋がっており、鱗から歯が進化したことがえる。このような歯は皮膚に軽く埋もれているだけで、たやすく剥がれる。また、そのためにこのような歯は噛む動作だけでは噛みつぶしたり切り裂いたりという用途には使いがたい。この歯を持って餌に引っかかり、全身の運動で食いちぎるようにする、あるいは丸飲みにするのが普通である。一部の動物([[鳥類|鳥]]・[[カメ|亀]]など)では口の縁が硬化して[[嘴]]を形成し、歯を失っている。
 
は虫類の一部で歯根を持ち、よりしっかりと固定された歯を見ることが出来るが、は虫類の歯は単一の形態しか持っていない。歯に多形を生じるのもほ乳類の特徴である。しかしながら、このような強固な歯を持つ代償として、ほ乳類の大部分のものは、一旦永久歯を失うと再度歯が生えることがなは無い。例外として[[ネズミ目]]や[[ウサギ目]]は一組の歯が生涯伸び続ける。
 
* [[象牙]]は食物を掘り出し、戦うために使われる切歯である。
 
キツネザル科、ロリス科などの種には、前歯がくし状となった{{ill2|櫛歯|en|Toothcomb}}(くし歯)をもつ<ref>{{Cite tweet |number=1187534496289169409 |user=j_monkeycentre |title= 日本モンキーセンター(公式) |access-date=2024-05-05}}</ref>。
以下、原則として人間の歯について述べる。
 
=== 家畜などの歯のケア ===
== 構成 ==
人間と同様に様々な病気のリスクがあり、デンタルケアが行われる<ref>{{Cite web |url=https://www.avma.org/resources-tools/pet-owners/petcare/pet-dental-care |title=Pet dental care | American Veterinary Medical Association |access-date=2024-06-10 |website=www.avma.org |language=en}}</ref>。
 
また、生まれたばかりの豚などが乳を吸うときに母ブタの乳頭や乳房に怪我を負わせないよう切歯が行われる<ref>辻 厚史ほか. 第31回家畜診療等技術全国研究集会入賞論文 出生子豚に対する切歯処置の実状とその改善策. 家畜診療 = Journal of livestock medicine. 52(7) (通号 505) 2005.7,p.389‐395. https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I7415393</ref>。
 
噛み合わせや欠けなどの問題、噛み癖などがある犬猫などに対して、生活歯髄切断術、犬歯切断などを行い鋭さをなくす場合がある<ref>{{Cite web |url=https://www.yasuda-animal-hospital.com/blog-2/1722/ |title=歯カット(生活歯髄切断術)やすだ動物病院 | やすだ動物病院 |access-date=2024-06-10 |website=www.yasuda-animal-hospital.com}}</ref>。
 
齧歯目は、歯が伸び続けるため飼育下で自然に摩耗しない場合は、ダイヤモンドカッターなどで切除する場合がある<ref>{{Cite web |url=https://www.hamazoo.net/breeder_log.php?eid=00308 |title=浜松市動物園公式サイト/わくわく!はまZOO/NPO法人浜松市動物園協会 |access-date=2024-06-10 |website=www.hamazoo.net}}</ref>。
 
魚は、摩耗はするが糖類を摂取しないため虫歯にはならない<ref>{{Cite web |url=https://manmaru-sinbun.com/event/06/04/29643 |title=不思議がいっぱい!水の中の生き物たちの「口」と「歯」 魚って虫歯にならないの? サンピアザ水族館に聞く | まんまる新聞 |access-date=2024-06-15 |date=2020-06-04 |website=manmaru-sinbun.com |language=ja}}</ref>。
 
=== ギャラリー ===
==== 魚類 ====
{{Commonscat|Fish teeth|魚の歯}}
{{see|魚類用語#歯・消化器官}}
<gallery>
File:Pharynx and Gill raker of Epinephelus coioides.jpg|[[チャイロマルハタ]] {{snamei||Epinephelus coioides}}([[ハタ科]])の口内
File:How to count shark teeth.png|史上最大のサメであるメガロドンの歯。{{ill2|サメの歯|en|Shark tooth}}は歯列があり、歯列ごとに生え変わる。
ファイル:Stingray teeth and jaws.jpg|板鰓亜綱の[[エイ]]の歯。貝や甲殻類を食べるのに適する。
File:Petromyzon marinus Teeth Japanese.JPG|[[円口類]]の[[ウミヤツメ]]([[ヤツメウナギ科]])の歯。
</gallery>
==== 哺乳類 ====
<gallery>
File:Lemur catta toothcomb.jpg|[[ワオキツネザル]]の{{ill2|櫛歯|en|Toothcomb}}(くし歯)
File:Hydropotes inermis male - cropped image.png|[[キバノロ]]の犬歯
ファイル:Noaa-walrus22.jpg|[[セイウチ]]の犬歯
ファイル:Babyrousa babyrussa 02 MWNH 123a.jpg|[[バビルサ]]の頭蓋骨。
File:Labeled_Rattus_Skull.jpg|げっ歯類の頭蓋骨。生涯伸び続ける切歯の後ろに、歯がない{{ill2|歯隙|en|Diastema}}があり、そのあとに臼歯がある。
</gallery>
 
== ヒトの歯 ==
{{Infobox 解剖学
|Name = 歯
|Image = Teeth by David Shankbone.jpg
|Caption = 成年男性の歯
|Image2 = Denticao.jpg
|Caption2 = 内側からの[[Computer Generated Imagery|CG画像]]
|Dorlands = eight/000109449
|DorlandsID = Tooth
}}
[[File:Cross sections of teeth intl.svg|thumb|300px|歯]]
{{Main|ヒトの歯}}
 
人体でもっとも硬く、遺体ではその治療状況によって人物の特定の重要な手掛かりとなる。[[人工歯]]と区別する意味で'''天然歯'''と言うこともある。[[歯学]]では'''歯牙'''(しが)と言ったが使わない傾向にある。
 
=== 歯の形態 ===
{{歯の模式図}}
; [[エナメル質]]
: 歯冠表面を覆うきわめて硬い物質(体の中で最も硬い組織)。約96%が[[燐灰石|ヒドロキシアパタイト]]を主成分とする[[無機物|無機質]]、残りの4%が[[水]]と[[有機物]]である。
: 表面、および象牙質近傍を除き、太さ5-7μm7µmのエナメル小柱により構成されている。ヒトにおいては4個のエナメル芽細胞により1本のエナメル小柱が形成されると考えられている{{Sfn|須田|2007|p=40}}。
; [[象牙質]]
: 歯の主体をなす硬組織。約70%がヒドロキシアパタイトを主成分とする無機質、20%が有機物、10%が水からできている{{Sfn|中塚|2004|p=68}}。
51 ⟶ 85行目:
: 歯の中央部に存在する歯の外形とほぼ一致している空洞。歯髄に満たされており、[[神経]]や[[血管]]が存在する。
 
またなお、[[歯肉]]、[[歯根膜]]、[[歯槽骨]]、[[セメント質]]を歯周組織という。
 
=== 発生歯の形成 ===
==== 歯の発生 ====
{{main|歯の発生}}
 
;# 蕾状期
#: 胎生5~6週頃に口腔の[[上皮]]が内部に肥厚することによって歯堤ができる。この歯堤の一部が間葉組織に向かい増殖して歯蕾と呼ばれる球状の結節を形成する。
;# 帽状期
#: 歯蕾が成長し帽子状になりエナメル器となる(エナメル器が囲んでいる内部を歯乳頭といい、エナメル器・歯乳頭を取り囲む組織をあわせて歯小嚢という{{Sfn|中塚|2004|p=80}})
;# 鐘状期
#: エナメル器がさらに成長し陥凹が深く鐘状になる。エナメル器には外エナメル上皮・星状網・中間層・内エナメル上皮の4層がみとめられるようになる。
;# 象牙質の形成
#: 内エナメル上皮に隣接する歯乳頭の細胞が1層に並び[[象牙芽細胞]]に分化{{Sfn|中塚|2004|p=80}}し、象牙質を作っていく。
;# エナメル質の形成
#: 内エナメル上皮から[[エナメル芽細胞]]が分化し、切縁、咬頭の側からエナメル質を形成していく。
 
===== 歯根の形成 =====
エナメル器の辺縁部(内エナメル上皮・外エナメル上皮の移行部)の上皮からヘルトウィッヒ上皮鞘が形成される。ヘルトウィッヒ上皮鞘は根尖方向へと進み象牙質形成を促し、歯根を形成する{{Sfn|中塚|2004|p=80}}。
 
===== セメント質の形成 =====
ある程度歯根の象牙質が作られた頃、ヘルトウィッヒ上皮鞘が分断される。その隙間から歯小嚢の細胞が移動しセメント芽細胞となりセメント質を形成していく。分断されたヘルトウィッヒ上皮鞘は歯小嚢から分化した歯周靱帯の中に残りマラッセの上皮遺残(残存上皮)となる。
 
萌出時にはまだ歯根は未完成であり、これが完成するのは萌出後しばらく経過してからである。また、萌出時にはこのときにはすでにエナメル芽細胞は存在しないが、象牙芽細胞はかつて歯乳頭であった歯髄の中に存在し、象牙質を作り続けている。
 
==== 種類成長線 ====
成長線とは、肉眼または顕微鏡学的に歯の表面に見える線状痕である。主に、歯の形成の良し悪し(例えば石灰化)で線状になることが多い。また、歯の種類や年齢によりできる成長線も違う。
=== 乳歯 ===
* [[新産線]] - 新産線 (neonatal line) とは、歯の成長線の一つで、出生により、胎内の安定した環境から外部に出ることによる環境の変動のために、出生後に作られている歯の石灰化度が出生前の石灰化度より低下することによりつく。そのため、出生時に既に歯が作られ始めている乳歯及び第一大臼歯のみで確認できる。
人間の子供の頃にある歯は合わせて20本であり'''乳歯'''('''脱落歯'''、'''第一生歯''')と呼ぶ。前方から順に乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯と呼ばれる。乳歯は生後6~8ヶ月ごろより多くの場合は下顎の前歯から生えてくる。3歳頃には全て生えそろう事が多い。乳歯は永久歯と比べてエナメル質と象牙質の厚みが薄く柔らかい。全体的に歯は小さく、青白や乳白色を示す。石灰化度が低いため、う蝕になりやすい。また、乳歯には骨髄や臍帯血に比べて高密度で[[幹細胞]]が含まれており、近親者へ移植できる可能性もあることから、骨などの[[再生医学|再生]]の実用化に向けた研究が進められている。
* [[レチウス条]]
* ハンターシュレーゲル条 - ハンターシュレーゲル条([[:en:Hunter-Schreger band|Hunter-Schreger band]])とは、歯の[[エナメル質]]の研磨切片において、エナメル小柱に走行が規則的に研磨面に対して「直交」する状態と「平行」な状態とを繰り返す為に現れる模様{{Sfn|中塚|2004|p=66}}である。エナメル質の内層1/2~1/3に渡って伸びている。
* エブネル線 - エブネル線(incremental line of von Ebner) とは象牙質にあらわれる最小単位の成長線である。血清カルシウムやpHの日内変動などにより生じるものと考えられている。歯冠部では平均6µm、歯根部では平均3.5µm間隔の縞模様としてみられる。しかし、この1日単位の成長線を認識することは難しく、数日単位よりなる約20µm間隔の成長線が認められる。この線は [[アンドレーゼン線]] (Andresen's line) とも呼ばれる{{Sfn|須田|2007|p=46}}。
* [[オウエンの外形線]] - オウエンの外形線(contour line of Owen) は病気や栄養不良による石灰化不全に伴い出現する{{Sfn|須田|2007|p=46}}。
 
=== 歯の構成 ===
ヒトの口腔内にある全歯を歯列という<ref name="zukan4">{{Cite book |和書 |author1=リッケン・C・シャイド |author2=ガブリエラ・ワイス |year=2015 |title=ウォールフェルの歯科解剖学図鑑 最新第8版 ペーパーバック普及版|page=4}}</ref>。上顎側に並ぶ歯を上顎歯列弓、下顎側に並ぶ歯を下顎歯列弓という<ref name="zukan4" />。人は一生のうちに乳歯列と永久歯列という2つの歯列をもつ<ref name="zukan4" />。
 
歯の部位を示すために、歯の内側を[[舌]]側、[[口蓋]]側、外側を[[唇]]側、[[頬]]側、正中に近い方を近心、反対側を遠心、上端<ref group="註">下顎の歯の場合。上顎の歯の場合は下端。</ref>を切縁、[[咬合]]面という。
 
==== 乳歯 ====
'''乳歯'''('''第一生歯''')は乳児期にみられる歯である。乳歯は生後6~8ヶ月ごろより多くの場合は下顎の前歯から生えてくる。
 
乳歯列は2歳から6歳頃にかけて生えそろい、歯の数は上顎側に並ぶ上顎歯列弓の10歯、下顎側に並ぶ下顎歯列弓の10歯の総20歯である<ref name="zukan4" />。人間の乳歯は大きく乳切歯、乳犬歯、乳臼歯の3歯種に分けることができる<ref name="zukan4" />。前方から乳中切歯、乳側切歯、乳犬歯、第一乳臼歯、第二乳臼歯の順に並ぶ<ref name="zukan4" />。乳歯は永久歯と比べてエナメル質と象牙質の厚みが薄く柔らかい。全体的に歯は小さく、青白や乳白色を示す。石灰化度が低いため、う蝕になりやすい。また、乳歯には骨髄や臍帯血に比べて高密度で[[幹細胞]]が含まれており、近親者へ移植できる可能性もあることから、骨などの[[再生医学|再生]]の実用化に向けた研究が進められている。
 
乳歯は最終的に12歳から13歳頃までにはすべて抜け落ち永久歯へと転換するため'''脱落歯'''ともいう<ref name="zukan4" />。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center"
|+ 乳歯列<ref name="zukan10" />
! rowspan="2" colspan="2" | 名称 !! rowspan="2" | [[パーマー]]式 !! colspan="2" | [[国際歯科連盟]]式 !! colspan="2" | [[アメリカ]]式
|-
| 右 || 左 || 右 || 左
|-
! rowspan="6" | 上顎歯
|-
| 上顎乳中切歯 || A || 51 || 61 || E || F
|-
| 上顎乳側切歯 || B || 52 || 62 || D || G
|-
| 上顎乳犬歯 || C || 53 || 63 || C || H
|-
| 上顎第一乳臼歯 || D || 54 || 64 || B || I
|-
| 上顎第二乳臼歯 || E || 55 || 65 || A || J
|-
! rowspan="6" | 下顎歯
|-
| 下顎乳中切歯 || A || 81 || 71 || P || O
|-
| 下顎乳側切歯 || B || 82 || 72 || Q || N
|-
| 下顎乳犬歯 || C || 83 || 73 || R || M
|-
| 下顎第一乳臼歯 || D || 84 || 74 || S || L
|-
| 下顎第二乳臼歯 || E || 85 || 75 || T || K
|}
* 歯科記録は患者等に向かっての歯の位置が示されるためチャートでは左の歯が右側、右の歯が左側となる<ref name="zukan7-10" />。
* パーマー式では上下左右の対称の位置の歯が同じ番号になるため、L字形の特殊な括弧を番号に付け、その向きで歯の位置を特定する<ref name="zukan10" />。
 
==== 永久歯 ====
* 上顎
'''永久歯'''は乳歯に代わって生えてくる歯である。永久歯が生え始めるのは6歳頃である。
** [[上顎乳中切歯]]
** [[上顎乳側切歯]]
** [[上顎乳犬歯]]
** [[上顎第一乳臼歯]]
** [[上顎第二乳臼歯]]
* 下顎
** [[下顎乳中切歯]]
** [[下顎乳側切歯]]
** [[下顎乳犬歯]]
** [[下顎第一乳臼歯]]
** [[下顎第二乳臼歯]]
 
永久歯列(第二次歯列)の歯の数は上顎側に並ぶ上顎歯列弓の16歯、下顎側に並ぶ下顎歯列弓の16歯の総32歯である<ref name="zukan4" />(親知らずを除くと28本である)。
=== 永久歯 ===
6歳頃から'''永久歯'''が生え始める。人間の永久歯は大きく[[切歯]]、[[犬歯]]、[[小臼歯]]、[[大臼歯]]の4種類に分ける事が出来る。現代人の歯は上下合わせて28本。親知らずを含めると32本である。切歯は中切歯、側切歯の2種類上下計8本ある。犬歯は上下計4本。臼歯は計20本存在し、小臼歯(第1小臼歯、第2小臼歯)と大臼歯(第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯)に分けられる。乳歯の脱落後に生えてくる、中切歯~第二小臼歯までを'''代生歯'''、'''第二生歯'''とよび、乳歯の存在しない大臼歯を'''加生歯'''と呼ぶ。まず、第1大臼歯(6歳臼歯とも呼ばれる)から生え始め、その後徐々に生え替わっていく。大体13歳頃には前歯から第2大臼歯までの28本が生えそろっている。第3大臼歯は生えてくるのが遅く、また、生えてこない事もあり「[[親知らず]]」(知歯/智歯)ともよばれる。
 
人間の永久歯は大きく[[切歯]]、[[犬歯]]、[[小臼歯]]、[[大臼歯]]の4歯種に分けることができる<ref name="zukan4" />。切歯は正中(中央)に隣接して存在し、その側方にそれぞれ側切歯がある<ref name="zukan4" />。切歯は中切歯、側切歯の2種類上下計8本ある。側切歯の奥には犬歯が上下計4本ある<ref name="zukan4" />。臼歯は計20本存在し、小臼歯(第1小臼歯、第2小臼歯)と大臼歯(第1大臼歯、第2大臼歯、第3大臼歯)に分けられる<ref name="zukan4" />。乳歯の脱落後に生えてくる、中切歯~第二小臼歯までを'''代生歯'''、'''第二生歯'''とよび、乳歯の存在しない大臼歯を'''加生歯'''と呼ぶ。まず、第1大臼歯(6歳臼歯とも呼ばれる)から生え始め、その後徐々に生え替わっていく。大体13歳頃には前歯から第2大臼歯までの28本が生えそろっている。第3大臼歯は生えてくるのが遅く、また、生えてこない事もあり「[[親知らず]]」(知歯/智歯)ともよばれる。
* 上顎
** [[上顎中切歯]]
** [[上顎側切歯]]
** [[上顎犬歯]]
** [[上顎第一小臼歯]]
** [[上顎第二小臼歯]]
** [[上顎第一大臼歯]]
** [[上顎第二大臼歯]]
** [[上顎第三大臼歯]]
* 下顎
** [[下顎中切歯]]
** [[下顎側切歯]]
** [[下顎犬歯]]
** [[下顎第一小臼歯]]
** [[下顎第二小臼歯]]
** [[下顎第一大臼歯]]
** [[下顎第二大臼歯]]
** [[下顎第三大臼歯]]
 
永久歯はきちんとケアをすれば死ぬまで使うことができる。また、[[高齢者]]への調査で、歯が多く存続しているほど活動的である事がわかっている。
 
{| class="wikitable" style="text-align:center"
== 歯の異常 ==
|+ 永久歯列<ref name="zukan10">{{Cite book |和書 |author1=リッケン・C・シャイド |author2=ガブリエラ・ワイス |year=2015 |title=ウォールフェルの歯科解剖学図鑑 最新第8版 ペーパーバック普及版|page=10}}</ref>
! rowspan="2" colspan="2" | 名称 !! rowspan="2" | [[パーマー]]式 !! colspan="2" | [[国際歯科連盟]]式 !! colspan="2" | [[アメリカ]]式
|-
| 右 || 左 || 右 || 左
|-
! rowspan="9" | 上顎歯
|-
| [[上顎中切歯]] || 1 || 11 || 21 || 8 || 9
|-
| [[上顎側切歯]] || 2 || 12 || 22 || 7 || 10
|-
| [[上顎犬歯]] || 3 || 13 || 23 || 6 || 11
|-
| [[上顎第一小臼歯]] || 4 || 14 || 24 || 5 || 12
|-
| [[上顎第二小臼歯]] || 5 || 15 || 25 || 4 || 13
|-
| [[上顎第一大臼歯]] || 6 || 16 || 26 || 3 || 14
|-
| [[上顎第二大臼歯]] || 7 || 17 || 27 || 2 || 15
|-
| [[上顎第三大臼歯]] || 8 || 18 || 28 || 1 || 16
|-
! rowspan="9" | 下顎歯
|-
| [[下顎中切歯]] || 1 || 41 || 31 || 25 || 24
|-
| [[下顎側切歯]] || 2 || 42 || 32 || 26 || 23
|-
| [[下顎犬歯]] || 3 || 43 || 33 || 27 || 22
|-
| [[下顎第一小臼歯]] || 4 || 44 || 34 || 28 || 21
|-
| [[下顎第二小臼歯]] || 5 || 45 || 35 || 29 || 20
|-
| [[下顎第一大臼歯]] || 6 || 46 || 36 || 30 || 19
|-
| [[下顎第二大臼歯]] || 7 || 47 || 37 || 31 || 18
|-
| [[下顎第三大臼歯]] || 8 || 48 || 38 || 32 || 17
|}
* 歯科記録は患者等に向かっての歯の位置が示されるためチャートでは左の歯が右側、右の歯が左側となる<ref name="zukan7-10">{{Cite book |和書 |author1=リッケン・C・シャイド |author2=ガブリエラ・ワイス |year=2015 |title=ウォールフェルの歯科解剖学図鑑 最新第8版 ペーパーバック普及版|pages=7-10}}</ref>。
* パーマー式では上下左右の対称の位置の歯が同じ番号になるため、L字形の特殊な括弧を番号に付け、その向きで歯の位置を特定する<ref name="zukan10" />。
 
=== 歯の異常 ===
歯の異常としては以下の物が知られている。
 
151 ⟶ 252行目:
** [[矮小歯]]{{Sfn|赤井|2000|p=134}}{{Sfn|中塚|2004|p=64}}
 
=== 成長線歯の文化 ===
[[File:Tooth_worm.jpg|thumb|18世紀まで中東やヨーロッパでは虫歯の中には{{ill2|Tooth worm|en|Tooth worm}}という虫が潜んでいると考えられていた。]]
成長線とは、肉眼または顕微鏡学的に歯の表面に見える線状痕である。主に、歯の形成の良し悪し(例えば石灰化)で線状になることが多い。また、歯の種類や年齢によりできる成長線も違う。
* 愛知県から発掘された縄文時代の遺骨には、抜歯や上前歯に溝を掘る叉状研歯という風習が確認できる<ref>[https://web.archive.org/web/20090520162840/http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1995collection2/tenji_honyurui2_36.html 叉状研歯のある縄文時代頭蓋骨]</ref>。
 
* 東アジア圏には、既婚女性がその印として、また虫歯予防として歯を黒く塗る[[お歯黒]]という文化が有った。
; [[新産線]]
* [[南アフリカ共和国]]のケープタウンの若い男女の間では上前歯の抜歯がおしゃれとされている<ref>[https://web.archive.org/web/20160221170929/http://www.terrafor.net/news_onqdclfjle.html 【海外:南アフリカ】超クール!?前歯の抜歯がアフリカ南部で長きに渡って流行中!! 日刊テラフォー]</ref>。
: 新産線 (neonatal line) とは、歯の成長線の一つで、出生により、胎内の安定した環境から外部に出ることによる環境の変動のために、出生後に作られている歯の石灰化度が出生前の石灰化度より低下することによりつく。そのため、出生時に既に歯が作られ始めている乳歯及び第一大臼歯のみで確認できる。
* {{ill2|デンテイル|en|Dentil}}(歯飾り) - ギリシア建築から見られるようになった壁上部の帯[[コーニス]]を装飾する櫛状に並んだ飾り。
; [[レチウス条]]
; ハンターシュレーゲル条
: '''ハンターシュレーゲル条'''(Hunter-Schreger band)とは、歯の[[エナメル質]]の研磨切片において、エナメル小柱に走行が規則的に研磨面に対して「直交」する状態と「平行」な状態とを繰り返す為に現れる模様{{Sfn|中塚|2004|p=66}}である。エナメル質の内層1/2~1/3に渡って伸びている。
; エブネル線
: '''エブネル線''' (incremental line of von Ebner) とは象牙質にあらわれる最小単位の成長線である。血清カルシウムやpHの日内変動などにより生じるものと考えられている。歯冠部では平均6μm、歯根部では平均3.5μm間隔の縞模様としてみられる。しかし、この1日単位の成長線を認識することは難しく、数日単位よりなる約20μm間隔の成長線が認められる。この線は [[アンドレーゼン線]] (Andresen's line) とも呼ばれる{{Sfn|須田|2007|p=46}}。
; [[オウエンの外形線]]
: '''オウエンの外形線''' (contour line of Owen) は病気や栄養不良による石灰化不全に伴い出現する{{Sfn|須田|2007|p=46}}。
 
== 利用方法 ==
{{独自研究|section=1|date=2015年8月5日 (水) 22:13 (UTC)}}
=== 人間 ===
歯の最も身近な利用方法は、[[食事]]である。食物を口中で細かく噛み砕いてから飲み下すことで、[[消化]]の助けを行う。また、そのままでは飲み込めない食物も細かく噛んで、喉の直径よりも小さくすることで摂取できるようになる。
 
他の利用方法として、かつての人類は[[毛皮]]などをなめす際には歯で噛んで柔らかくしていた。現在でも、[[伝統芸能]]などではこの方法で毛皮をなめす人が存在する。また、[[裁縫]]では糸を切るときに鋭い[[犬歯]]を用いたり、伸びた爪をかみ切る利用方法もある。ただし、爪を噛むのは[[文化]]によっては行儀が悪いとされることもある。
 
== 義歯 ==
また変わったところでは、歯はかなり堅く、さらに人間の[[顎]]の力もかなりのものであるため、腕力などが弱い[[女性]]に対しては[[護身術]]として「噛みつき」が奨励されることもある。
{{Main|義歯|人工歯}}
 
人工歯が一般的だが天然歯も入れ歯の材料としても使われた<ref>[http://news.dent-care.jp/?p=618 ワーテルローの戦いからうまれた「入れ歯」 Dental Now!インプラントやホワイトニング等、歯の総合情報サイト]</ref>。ジョージ・ワシントンは生涯4つの入れ歯を使ったが、1つ目の入れ歯の下の歯は抜けた自分の歯を使ったという<ref>[http://www.wakaba-d.or.jp/builder/ireba/ireba1.html 入れ歯の歴史(若葉歯科医院・調布市仙川)]</ref>。
 
== 人間による動物の歯の利用 ==
 
=== 動物 ===
道具を用いない動物、特に[[肉食動物]]にとって、歯は食事以外にも狩りのための重要な道具となる。鋭く発達した歯は食らいつくことで獲物を傷付け、時に失血死にさえ追いやることが可能である。[[剣歯虎|サーベルタイガー]]などの異常に発達した歯は、獲物を失血死させることを目的とした物である。
 
[[牙]]と呼ばれるほどに発達した歯は[[オス|雄]]の強さの象徴ともなり、牙の大きさを強弱を決める指標とする種も珍しくない。
 
また、護身の道具ともなりうる。例として、一部の[[シカ|鹿]]では[[角]]ではなく牙を発達させた種類が存在し、護身や雄同士の争いに利用している。
 
[[ヘビ|蛇]]の仲間のうち、[[毒]]を持つものは歯で噛みつくことによって敵に毒を注入する。
 
=== 人間による動物の歯の利用 ===
かつての人類は、狩りで捕らえた[[マンモス]]など大型動物の歯を槍や鏃、斧などに加工して利用していた。また、鋭い歯は加工しなくてもそのまま[[ナイフ]]として用いられる場合もあったようである。
 
191 ⟶ 270行目:
 
鹿、セイウチ等の歯は入れ歯としても使われる。
 
 
== 文化 ==
* 愛知県から発掘された縄文時代の遺骨には、抜歯や上前歯に溝を掘る叉状研歯という風習が確認できる<ref>[http://www.um.u-tokyo.ac.jp/publish_db/1995collection2/tenji_honyurui2_36.html 叉状研歯のある縄文時代頭蓋骨]</ref>。
* 東アジア圏には、既婚女性がその印として、また虫歯予防として歯を黒く塗る[[お歯黒]]という文化が有った。
* [[南アフリカ共和国]]のケープタウンの若い男女の間では上前歯の抜歯がおしゃれとされている<ref>[http://www.terrafor.net/news_onqdclfjle.html 【海外:南アフリカ】超クール!?前歯の抜歯がアフリカ南部で長きに渡って流行中!! 日刊テラフォー]</ref>。
 
== 脚注 ==
206 ⟶ 279行目:
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author=[[赤井三千男]]|authorlink=赤井三千男 |editor=[[赤井三千男]]|editor-link=赤井三千男 |title=歯の解剖学入門 |edition=第1版第6刷 |date=2000-10-31 |publisher=[[医歯薬出版]] |location=[[東京都]][[文京区]] |isbn=4-263-40572-2|pages=131-148 |chapter=第5章 歯の異常 |ref={{SfnRef|赤井|2000}}}}
* {{Cite isbn/9784816012082|author=[[田中昭夫 (歯学者)|田中昭夫]] |pages= 24-29 |chapter= 第1章 歯周疾患を正しく理解するための基礎知識 2.歯周組織の構造・組織学 |ref= {{SfnRef|田中}} }}
* {{Cite book|和書|author=[[中塚敏弘]]|authorlink=中塚敏弘 |title=口腔解剖学サイドリーダー -歯科のための頭頚部解剖学・口腔解剖学要説- |edition=第1版第4刷 |date=2004-06-10 |publisher=[[学建書院]] |location=[[東京都]][[文京区]] |isbn=4-7624-0106-4 |ref={{SfnRef|中塚|2004}}}}
* {{citeCite book|和書|author=須田立雄|author2=小澤英浩|author3=高橋榮明|author4=田中栄|author5=中村浩彰|author6=森諭史|title=新骨の科学|publisher=医歯薬出版|year=2007|isbn=978-4-263-45609-5}}
 
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Teeth}}
{{Wiktionary|歯}}
* [[ヒトの歯]]
** [[永久歯]]/[[乳歯]]
** [[セメント質]]/[[象牙質]]/[[エナメル質]]/[[歯髄]]/[[歯肉]]/[[歯肉溝]]/[[歯槽骨]]/[[歯根]]/[[歯根膜]]
* {{仮リンク|歯式|en|Dentition}}
* [[2次カリエス]](二次う蝕)
* [[永久歯]]/[[乳歯]]/[[魔歯]]
* [[セメント質]]/[[象牙質]]/[[エナメル質]]/[[歯髄]]/[[歯肉]]/[[歯肉溝]]/[[歯槽骨]]/[[歯根]]/[[歯根膜]]/[[骨]]
* [[歯学]]/[[医学]]
* [[う蝕]]/[[歯周病]]/[[抜歯]]
223 ⟶ 298行目:
* [[解剖学]]/[[口腔解剖学]]/[[口腔細菌学]]/[[口腔病理学]]/[[歯科補綴学]]/[[保存修復学]]
* [[歯科医師]]/[[歯科衛生士]]/[[歯科技工士]]/[[専門医]]/[[日本歯科医師会]]/[[8020運動]]
* [[歯学部]]/[[医学部]]
* [[歯科医師過剰問題]]
* [[発声器官]]/[[歯音]]/[[歯茎音]] (音声学)
* その他:歯(単位)→[[写真植字機]]参照
:** [[歯の妖精]]
:** [[ガルバニ電池|ガルバニ電流]](ガルバニー電流、ガルバニック電流、英語:Galvanic current, [[:en:Galvanism|Galvanism]])
::: [[歯科金属]](金属製の歯の詰め物)をしている人が[[アルミホイル]]などを噛むときに覚える不快感の、原因となる微弱な[[直流]][[電流]]。[[ルイージ・ガルヴァーニ]]の名にちなむ。
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:は}}
[[Category:歯|*]]
[[Category:動物解剖学]]
[[Category:脊椎動物の解剖学]]
 
<!-- interlanguagewiki -->